近未来、ヒトは

根元的な孤独を

突きつけられる……。

 自宅からバーチャル出社するような近未来。スギタは「AI開発プロジェクト」に携わっている。 ある日、世界を震撼さ せている新種のコンピューター・ウィルスがスギタの会社のホストコンピューターに侵入する。スギタを含む4人の技術者たちはワクチン開発に知恵をしぼりながら内部犯行を疑い悪戦苦闘する。ウィルスはスギタが開発する「人間の頭脳コンピューターシステム」を標的としていることが判明。スギタはこのシステムに疑問を抱き始める。「なぜ標的にされたのか……」ついにハッカーの存在を突き止めたが……。

どこまで人間に近づけるのか?
  現在めざましい勢いで進化し続けるコンピューター界。どこまで人間に近づけるのか?次々に生み出されるコミュニケーション・ツールに、直接声にだして会話することはなくなるのか?人間は新しい生命体を創り出す神になれるのか?人間はコンピューターと同化してしまうのか?人間とは何か?この作品は多くの疑問を語りかけます。

 登場人物がホログラフィ装置によって3次元映像で出勤している姿は、まさに近未来の日本でも当然のように見られる姿なのではないか。バーチャル・リアリティ時代の先駆け、SF的な世界の中に、コミュニケーションのあり方を問い、人間の根本的な孤独の姿を追求した物語。



 今から16年前──。
  「トロイの木馬」という言葉が一部の人のあいだで取り沙汰された。日本では「コンピュータ・ウィルス」という概念さえ、まだまだ一般的でなかった当時、日本にもついに上陸してしまった最初の有名なウィルス、それが「トロイの木馬」という名前だった。当時はコンピュータといえば、未来を切り開く「夢のツール」として崇められていただけに、コンピュータに関わる「悪役」の登場は、輝かしい21世紀に影を落とす不吉の象徴ともなり、ちょっとした「事件」として話題を振りまいた。
  そして現在、2004年──。
  今では、「ハッカー」「ネット犯罪」など連日のようにマスコミに登場し、『マトリックス』に代表されるコンピュータ内での熾烈な闘いなどの映画も特に目新しい分野ではなくなった。世の人々は、パーソナル・コンピュータはおろか、パーソナル電話さえ100年も前から持っていたような顔をして使いこなし、時代はあれよあれよと「パーソナル化=孤独化」へと突き進んでいる。
  『赤のソリスト』は16年前に書いた戯曲で、システム・エンジニアたちがコンピュータ・ウィルスと闘う物語だ。彼らは自宅にいながら、『スターウォーズ』でお目見えしたような「ホログラフィ」の3次元映像として会社に出勤し、姿の見えぬ敵と悪戦苦闘の戦いを繰り広げる。
  今回久しぶりに、10年以上もの時を経て、この戯曲を舞台化するのだが、姿の見えぬ敵と戦う彼らの奮闘ぶりは、相変わらず青臭いほどに一生懸命で、もの悲しいほどに孤独で、そしてちょっぴり間抜けで馬鹿馬鹿しい。
/古城十忍
 


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劇団一跡二跳
制作:岸本 匡史