少女と老女のポルカ
 本作品では、主役の少女と老女を共に男優が演じます。しかもスカートは履くものの、化粧もせず、髪型も男のままで。どう見ても男にしか見えない二人を、物語の進行に従い、観客の想像力を喚起させることで、男優が次第に本当の少女と老女に見えてくる。そうした演劇の想像力の可能性を追求していきます。
 初演は1997年2月。女性を男優が演じることで、随所におかしさを生みながらも、底辺には老人の孤独・死とどう向き合うのか・一筋縄では行かない学校教育といった重いテーマも流れており、観客アンケートでは圧倒的な支持を得て、読売新聞の劇評でも「透徹した死生観と希望にあふれた舞台」と絶賛されました。
 再演にあたってはより女らしさを排除した演技・風貌で、どこまで演劇の可能性を探れるか、初演以上に挑みたいと考えています。また、戯曲は1997年に而立書房から出版されていますが、さらに末期医療の現場・学校教育の現状を再取材して改訂していきたいと考えています。



少女も老女も男優が演じ、新一郎は3人1役で演じられるという
男だらけの少女と老女の友情物語
 独り暮らしの70歳の老女の家に、近所に住む小学5年生の少女が遊びに来るようになる。二人は初恋の相手がともに「新一郎」と同じ名前だったことで、すっかり意気投合するのだが、二人にはもうひとつの隠された共通点があった。それはともに「食べない」ということ。実は、老女は末期癌に侵されていて余命幾許もなく、必要以上の延命治療を受け入れたくないことから餓死して死ぬことを決意しており、母子家庭の少女は学校でいじめに遭っていて不登校を繰り返すうちに拒食症になっていたのだった。
 やがて老女の家には、さまざまな男たちも出入りするようになる。老女の担当医、26年ぶりに訪ねてきた老女の息子、少女の担任教師、離婚して海外で暮らしていた少女の父親……。そうして少女と老女の隠された事実が次第に明らかになっていくなか、老女の死期は刻一刻と近づいてくる……。



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劇団一跡二跳

制作:岸本 匡史