人間は孤独である。孤独だから人と理解し合いたいと切に願う。
心が通い合えば天にも昇る喜び。叶わなければ身が引き裂かれるほどの地獄。
シャンリィの戯曲にはそんな思いが詰まっている気がする。
『お月さまへようこそ』も「孤独な心の交流」を描いた6話オムニバス。
どれもこれも味わい深い話だけど、中でも「池に住む人魚の話」は稽古の段階から僕は泣けて泣けてしょうがない。(演出・古城十忍)
ストーリー
●赤いコート
予備校に通う少年は、同じ予備校で知り合った少女への恋心で勉強も手につかない。月の輝く夜、夏期講習の教室を抜け出した少年の前にあらわれた少女に緊張しながらもついに想いを告白する。最初は驚いていたが、だんだんと2人の距離は縮まってゆき……。満月に見守られて輝く、初々しい恋の物語。
●どん底
詩人とその恋人は疲れきっていた。貧しく、食べるものもない。詩を書くための鉛筆すらない。全てを取り上げられ、絶望の中、小さな箱に閉じこめておいた魂だけを、何とか守りとおしている2人の元にやっと届いた鉛筆だったが……。
●西部劇
厳しい両親に束縛されている少女のもとに、自由気ままなカウボーイがやってきて、少女は恋をした。カウボーイに自分の兄を殺されていた少女の恋人が、カウボーイと決闘することとなり……。
●喜びの孤独な衝動
夜中に親友を呼び出し、池の畔で恋の打ち明け話をするが、親友にはまったく理解してもらえなかった……。人魚を愛した男の悲しい物語。
●星降る夜に出掛けよう
自分を愛してくれる人を捜している孤独な女が、孤独な男と出会い理解し合ったことで、世界の美しさと喜びに気づいていく……。
●お月さまへようこそ
青春を共に過ごした仲間同士が懐かしい故郷に帰ってきた。過去を引きずって生きてきた仲間が、今まで自分の中に抑え込んできた気持ちを打ち明けあっていく……。
作/ジョン・パトリック・シャンリィ/John Patrick Shanley
1950年ニューヨーク、ブロンクス生まれ。ニューヨーク大学卒。初めは詩人であったが、その後劇作家としてオフブロードウェイで数々の戯曲を発表。殺伐とした都会に生きる孤独で傷つきやすい人々を暖かいまなざしで描く彼の作品は、都会に住む人々に圧倒的な支持を得る。
戯曲「お月さまへようこそ」「ダニーと紺碧の海」「マンハッタンの女たち」など。1987年「月の輝く夜に」でアカデミー脚本賞を受賞。
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