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2)道の上
女2 いいの、わかってるから。はっきり言って、覚悟できてるし。
男2 なんだよ覚悟って。
女2 言えばお互いすっきりするんだから。3秒待つわ。ハイ321……
男2 だから来てるじゃないか、こうして荷物持って、来たいから来たんだよ。
女2 同情? 義務感?
男2 俺はアツシ君の父親だ。
女2 父親が息子を君づけで呼ぶ?
男2 ………。




3)空の下

男1 ………。(女0を見て、空を見上げる)
女0 (空を見上げ)ねぇハワイの空って、これより青かった?
男1 ───気がするな。
女0 腹が立ったりした?
男1 何見ても浮かれっぱなし。
女0 別ぁれテェープゥをぉ笑顔で切ればぁ〜希望はてなぁい〜遙かな……

 


4)カラオケボックス

男2 場所としちゃ、いいコーディネートだと思うよ。テラハラさん、そこらへんちゃんと考えてくれてるんだよ。
女2 でも密室って逃げ場がないってことでしょ、テラハラさんいないのよ、いきなり修羅場になったらどうするの?
男2 だから言ったろ我慢だって。馬に乗って。
女2 あ、馬。そう、馬ね、馬。
男2 ………。
女2 ………。



男1 歌い始めて───、カオルは何曲の歌を歌うことができたのだろうと考えた。
通算100曲ぐらいは歌えたのだろうか。
生まれて初めてカオルが歌ったのはいつだったか───。
カオルが最後に歌ったのはどんな場面だったのか───。
カオルと私は、声を合わせて同じ歌を歌ったことがあっただろうか。
カオルと私が、一緒に歌える歌は世界に何曲あったのだろう。
いったいこの世界には、カオルの知らない、歌うことのなかった歌が、何曲あるのだろう。



男1 (拳で胸をドンドンと叩きつつ)ここが、ここの、なんか知らん重いものが少しでも取れたか?
女1 ───どうしてあたしを責めるの?
男1 ───責めてない。
女1 責めてるわ。あれ以来、あなた一度だって、あたしの欲しい言葉をくれたことない。あなたの言葉にやすらげたことはあれ以来、一度だってない。
男1 ………。
女1 この人たちと理解し合う前に、あたしにはないの、言葉は。
男1 ………。


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