「癒し」と「報復」をめぐる物語 |
2組の家族が連れ立って旅をする。 被害者家族と加害者家族。その接点は───殺人事件。 |
日本では今、「癒し」という言葉がもてはやされています。
「私」は旅に出た。
殺人犯となった加害者の家族と、殺された被害者の家族。 |
■ジャーニー・オブ・ホープ 殺人犯となった加害者の家族と、殺された被害者の家族。 決して相容れることのなさそうな家族同士が、ともにキャンプしながら心の傷を乗り越えていく。そういう旅がアメリカには実際にあります。 「ジャーニー・オブ・ホープ」と呼ばれるこの旅は、全米4000人の会員からなる市民団体の主催で1993年にスタートしました。以来、毎年、アメリカの死刑制度を持つ州を旅先に選んで実施されています。そう、この「ジャーニー・オブ・ホープ」は被害者の家族と死刑囚の家族が、死刑のない社会を目指して、ともに旅をするものでもあるのです。 死刑囚の家族が死刑反対を訴える。これは心情的にわかりやすい。でも、殺された側の家族が死刑制度廃止を訴える。こちらはなかなか腑に落ちにくいものがあります。 思うに、「ジャーニー・オブ・ホープ」では、旅行者同士が想像を絶するような、「癒し」と「報復」の心理ドラマを展開しているのかもしれません。 もちろん日本に、こうした市民団体はありませんし、旅も行われていません。 ですが、死刑制度はしっかりとありますし、何人もの死刑囚に死刑執行が行われています。 もし日本人が、この旅に参加したらどうなるのでしょう。 葛藤の果てに和解があるのでしょうか。 |
制作:岸本 匡史