[ Return ]

   
テーマは「葬送の自由」。

葬式をする・しない、遺骨の処理方法といった「死後の決定権は誰にあるのか?」という問題に真正面から踏み込んだ作品です。
また、パソコン通信のチャッターたちを登場人物とすることで、ともに直接会うことのないコミュニケーションのあり方(葬式も当の本人は死んでいるので相対して依頼できない)の是非を問う舞台でもあります。

初演は1994年2月/青山円形劇場、再演は1995年/六行会ホール。
この数年、マスコミでも「現代葬式事情」が取り上げられるようになり、パソコンも飛躍的に普及しました。

 1998年の今、このテーマを改めて取り上げる意義は大きいのではないか。その考えのもとに、戯曲はすでに1994年に而立書房より出版されていますが、今回の再々演にあたって、今現在の状況を踏まえた形で戯曲を改訂し、上演したいと考えています。


STORY
ニッポン全国、真夜中。
今夜もパソコン通信のチャッターたちの会話の花が咲く。
ハンドルネーム「ヤリタイ」「シタイ」「小夜子」「天涯孤独」の4人もそんな仲間だ。
ところが初めて直接顔を合わせる“オフ会”が近いというのに、シタイからの連絡が途絶えてしまった。
そしてある日、シタイから仲間全員に謎の電子メールが届けられる。
その指示に従ってヤリタイが手に入れたのは、白い粉の入った謎の小瓶……。
それは小夜子にも天涯孤独にも届けられていた。
シタイは何の目的で白い粉を送ってきたのか?
謎が謎を孕みながら、ヤリタイのシタイ捜しが始まっていく……。

 



ON=ヤリタイ男
俺のハンドル名は「ヤリタイ」。夜な夜な、パソコン通信でダベってる。気の合う仲間は「シタイ」「小夜子」「天涯孤独」の3人。互いの素性はまるで知らないが、もうすぐご対面。そう、いよいよ会う日を決めたのだ。ところがシタイからの連絡が途絶えた。そして代わりに、仲間全員に謎の電子メールが。[最寄りの交番に出向きないさい。「小野」と名乗り、黒いセカンドバックを受け取りなさい。]どういうことだ。シタイは何を渡す気なのか。そもそも奴はなぜ、姿を消したのか。

OFF=葬儀屋男
俺の仕事は葬儀屋。夜な夜な、誰か死なないものかと待っている。そう、あの世とこの世の橋渡しが俺のビジネス。ホトケが出たら即営業、葬式一切を取り仕切るのだ。ところが突然、とんでもない天敵が現れた。奴の仕事もあの世とこの世の橋渡し。遺言バンクの人間だという敵は、俺のホトケに葬儀をするなと待ったをかける。それが故人の遺言だなどとぬかす。ふざけるな。久々においしい金づるなんだ。遺言なんてクソくらえ。この死体争奪戦、何があっても、負けてなるものか。

 

[ Return ]Index

劇団一跡二跳

制作:岸本 匡史