リセット

第30回公演
リセット
1996.7/17(Wed)--28(Sun)
Theme:医療過誤・抗ガン剤 Place:ザ・スズナリ

「リセット」とは何か？

リセットとは、問い直すこと。
あるいは、やり直す。
例えば誰もがやり直したい、帰りたいと思う「あの頃」がある。
あの頃にもう一度、自分をセットしてみたいという見果てぬ欲望。
あるいは、ゼロにすること。たとえば脈拍の数。
「０になる」のが死を意味するとすれば「０にする」は殺すと言うこと。
あるいは、最初から始めること。
些細なミスならいいが、とんでもない失敗や失態は人生と背中合わせ。
御破算に出来れば誰だって嬉しい。
犯した間違いを正して、初めに戻すこと。白紙に返すこと。
許すということ。
医者とプロパーと葬儀屋。
彼らが何かをリセットしようとする。
欲望のために、間違いのために、誰かのために。
リセットはできるのか。
舞台は病院。そこではいつも、生と死が背中合わせだ。

－『リセット』の３つのコンセプト－
1. 〈登場人物をリセットする〉
  この芝居には過去の作品に登場した人物がキャラクターもそのままに、続編のように再登場します。例えば『ＯＮとＯＦＦのセレナーデ』の葬儀屋のヤリタイと看護婦の深町、『眠れる森の死体』の外科医の猪瀬・境など。つまり、過去の作品の登場人物たちがこの『リセット』という作品にリセットされるわけです。
2. 〈観客がリセットする〉
  この作品では時間的つながり、登場人物の関係などの構成が、今まで以上に緻密に計算されて進行していきす。つまり、次々にパズルのように提示されていくシーンの断片を、観客が頭の中で組み立てる（リセットする）ことで初めてシーンが成立し、作品そのものも成立していく演劇を志しています。
3. 〈物語の中でリセットする〉
  そしてもちろん、医者・葬儀屋・ＭＲ（製薬会社営業マン）といった主な登場人物たが、この『リセット』という新たな物語の中で、生と死が背中合わせにある病院を舞台に、それぞれ何かをリセットしようとします。誰が何のために何をどうリセットするのか。それは……見てのお楽しみということで。どうぞ御期待ください。
リセットされる主な登場人物の紹介
- 猪瀬
  大学病院の外科に勤務する助教授ドクター。45歳。
  第27回公演『眠れる森の死体』では次の有力な教授候補と目されながら、担当していた１人の患者が急死。誤診を疑われる。
- 景浦
  病院に常駐する葬儀屋。パソコンに精通し、病院の患者リストまで作成している。パソ通のチャットにもハマっていて、ハンドル名は「ヤリタイ」。
  第21回公演『ＯＮとＯＦＦのセレナーデ』で、アクセスの途絶えたチャット仲間「シタイ」を探すうちに、すでに死んでしまってあとの「シタイ」と出会うという超常現象を体験した。
- 市川
  準大手製薬会社のＭＲ（医薬情報担当者＝営業マン）。
  第23回公演『イエスマンの最後のイエス』で、仕事は抜群にできるが、人に冷淡で攻撃的な男として描かれた。『リセット』では職業設定は同じだが、キャラクターは一新されて登場する。
- 深町
  『ＯＮとＯＦＦのセレナーデ』に登場したナース。景浦に死亡患者の情報を教えている。
- 境
  『眠れる森の死体』で猪瀬の誤診(？)による患者の手術執刀を任された、外科の講師ドクター。まだ20代の若さだが、オペの技術は超一流。猪瀬の部下にあたるが、プライベートな事情もあって、猪瀬には複雑な感情を抱いている。

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劇団一跡二跳

制作:岸本匡史