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奥村老女 松浦少女 新野男4 越村男5
男2でも俺、うるせぇって言ったんだ。
老女……そう。(微笑む)
男2初めてうるせぇって、男に怒鳴った。
老女そしたら?
男2気持ちよかった。
老女ハルさん、惚れちゃう。

老女それが不思議なんだけど全然怖くないの。懐かしいの。
男1懐かしい?
老女懐かしい気分になりながら思うのよ。あ、あたし、今、自分を食べてるんだって。
男1自分を食べてる……んですか。
老女これまで過ごした時間。思い。そういうの食べ直してる。牛がほら反芻するっていうじゃない。似てるかしらね。あたしの血となり肉となった、いろんな出来事を食べてる。自分をあたし食べてるのよ。

老女手を握らせて。
男4………。
老女一瞬でいいの。頼めない?
 黙って見ていた男4、老女に歩み寄って手を差し出す。
老女、その手を両手で握りしめる。
そのまま、一瞬といわず長い時間が流れて−。
男4ずっとオヤジの手を握ってればよかったんだ。
老女そうね。
男4これはオヤジの手じゃない
老女そうね。

老女そういう食べ物じゃないけど、今までいろんな、たくさんの人からもらった栄養がね、ハルさんの体の中にはいっぱいあるの。それ、食べてるのよ。
少女でもケーキもおいしいよ。
老女イッコちゃん……。
少女一緒に食べよう。
老女………。
少女あたしも食べるからハルさん、一緒に食べよう。
 少女、ケーキを出して食べ始める。食べながら−。
少女おいしいよハルさん、一緒に食べて。あたし食べてるじゃない、おいしいから一緒に食べて。食べようよ。ハルさぁん。死んじゃやだぁっ。(涙が溢れてきて)死なないで。やだよ、死んじゃ。食べようよ。食べようよ。………。


THE END

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