ユースフェス参加作品 夏の夜の貘 1997.8.16(Sat)--18(Mon) Place:紀伊國屋サザンシアター |
ものがたり |
この物語は一人の少年から見た“精神年齢の世界”です。 主人公の「羽山走次」は小学校3年生。実年齢は8歳ですが、ある日、精神年齢だけが異常に発達して20歳になってしまいます。すると、たちまち世界は一変。走次から見れば、周りの大人たちは皆、精神年齢が非常に幼いのです。父も母も、担任の先生さえも、まるで幼い子供。19歳の兄もまだまだ小学生クラス、寝たきりの祖父にいたってはまるで赤ん坊…。 どうしてこんなことになってしまったのか…? その原因を探るべく思い悩んでいるうちに、走次は同じ3年生の「外海のりこ」と出会います。実はのりこもまた走次と同じように精神年齢が大人になっていたのです。そして彼女はシェークスピアの『夏の夜の夢』の本を示し、「この恋人たちのように、私たちは恋の魔法をかけられたのだ」と言うのです。 話を聞いた走次は喜び勇んで家に帰っていきます。というのも家庭の中でただ一人、ホームヘルパーとしてやってくる「青井小箱さん」の精神年齢だけは、走次から見ても実年齢と同じ20歳だったからです。 こうして走次は『夏の夜の夢』の登場人物さながら、魔法を受け入れて、家庭という森をさまよい始めていきます。しかし魔法は、次第に恋の魔法から悪夢へと変わっていくのでした…。 |
原作との出会い |
大島弓子の漫画『夏の夜の貘』は、すべての登場人物がその精神年齢で登場するという、発想が奇抜で衝撃的な作品です。自分勝手な大人たちは子供の姿に描かれ、現実の生活にじっと耐える少年が大人に描かれる様は、観客の想像力をかきたてる舞台表現に優れて近しいものがあるのではないでしょうか。 劇団一跡二跳は“時間”と“コミュニケーション”をテーマにした作品を次々に上演してきました。そしてこの『夏の夜の貘』には大いに共通性を感じることができました。精神年齢と実年齢を行きかう時間や精神年齢の異なる家族が絆を保とうとするコミュニケーション。大島作品のこうした斬新な時間とコミュニケーションの視点をもとに観客の想像力をより刺激する舞台にしたいと考えたのです。 |
制作:岸本 匡史