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松浦ヤリタイ ● 奥村山田
THURSDAY / OFF

ヤリタイ雪?
看護婦知らなかったのぉ?
ヤリタイ(窓の外を見て)……ほんとだ……。
看護婦だって寒かったもの、この冬いちばんの冷え込みだって。
ヤリタイこういう日は年寄りがポックリ逝きやすいんだよなぁ。
看護婦………。
  看護婦、パソコンの画面を覗きこんで−。
看護婦また作ってるんですかぁ?死にそうな患者さんリスト。
ヤリタイ勝手にいじるなよ。
看護婦さぁて、次に死ぬのは誰なんでしょうねぇ?
ヤリタイばぁ〜か、パソ通でチャットやってたんだよ。

  ヤリタイが看護婦の腕をねじあげて、二人の動きは止まる。
見合う男と女。
ややあって、ヤリタイが看護婦にキスしようと−。
看護婦(そらして)やめてよ。
ヤリタイどうして?
看護婦見当違いしないで。
ヤリタイ(すかさず後ろから抱きしめ)ビジネスの時間はまだなんだろ?
看護婦よくこんなことできるわね、人が死んだのよ。
ヤリタイけど俺たちは生きてる。

ヤリタイいえ、実は私、医者じゃないんで……。
房子は?
ヤリタイ実はこういう者でして……。(名刺を差し出す)
房子……。(名刺を読み、意表をつかれた顔でヤリタイを見る)
ヤリタイ葬儀屋です。

房子主人がいればよかったんですけど、生憎、仕事でカナダの方に行ってまして。
ヤリタイカナダに?それじゃ帰りたくても……。
房子帰れなかったんです。(再び突きあげるような嗚咽)
ヤリタイ……お察しします。

医者(ヤリタイに)こちら、遺言バンクの方で……。
背広の男(名刺を差し出し)山田です。山田宗一郎と申します。
ヤリタイ(受け取って)遺言バンク……?
山田お宅が葬儀屋さんとは知りませんでした。

山田……原山さん、灰になりたいんですよ。
ヤリタイ灰?
山田ええ、骨じゃなくて灰です。(灰皿を示し)ま、こんなもんですか。(と灰皿をヤリタイに返す)
ヤリタイ……変わった趣味があるんだな。
山田散骨って言うんですがね、火葬のときふだんより強い火で焼いて、モロくなった骨を砕いて灰みたくするんですよ。で、それを海とか山に撒くんです。

  房子、さらにヤリタイに一礼し、ヤリタイも深々とお辞儀。
山田、そのまま出ていこうとする房子に近づいて、房子が持っている遺言書に黙って手をかける。
山田と房子、遺言書を間に挟む格好で厳しい視線を交わす。
房子……何ですか?
山田お金は要りませんから。
房子よろしいんですか?
山田ここに在るお父さんの遺志は、間違いなくお伝えしましたので。
房子………。

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