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 本日は一跡二跳と出会ってくださって、どうもありがとうございます。
 11月4日に岡山県早島町で幕を開けたこの舞台は、中国・四国の各地で公演を重ね、東京公演初日が通算11ステージ目にあたります。
 一跡二跳初の「新作地方初日」という経験は、観客に舞台が育てられていく経験でもあるんだなと今、つくづく実感しています。早島町での舞台から比べると、この作品はずいぶん変貌してきました。セリフをいじり、演出を変え、照明も音楽も変わったところがいくつかありますし、もちろん役者たちもずいぶん触発されて、それぞれが悪戦苦闘を続けているような気がします。この悪戦苦闘がそのまま登場人物たちの心の深さとなり、皆さんの前に立ち現れてくれることを今はただただ願うばかりです。
 東京公演でもきっと、日々変貌を続けるのかもしれません。だからこそより一層、あなたとの出会いを嬉しく思います。本当にありがとう。見届けてやってください。
 それではまもなく開演です。舞台の想像力を心からお楽しみください。
1999年11月 古城十忍

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新野男X 越村男Y
1) マスク(Paint it black.)



男Y言えよ。何だよ、何が気に入らないんだ?
男X理由なんかない。あるか普通? 好きになるのに理由がないように嫌いになるのも訳なんかねぇんだよ。
男Yあるさ。考えてないんだよ、それはお前が。考えれば何にでも理由はあって、理由をたどって人は自分を進化させるんだ。
男X進化?
男Yそうとも変化するんだよ少しずつ、変われるんだ。
男X何が変わる? もううんざりだ、終わりなんだよ。


男X顔。
男Y………。
男Xどうしようもないんだ……。
男Y顔のどこだ?
男X………。
男Y言えっ、顔のどこだよ?
男X………。
 言葉を押し殺して男X、男Yのシャツのボタンを外していく……。
露わになっていく男Yの肩、胸、腹部……。
シャツをはだけ、押し倒すように男Yを椅子に座らせる。
花瓶から1本だけ残して男X、薔薇の花を抜き取って持ち―。
男X左目。
男Y………。
 残された薔薇を抜き取って男Y、花瓶に突っ込んで浸す。
浸した薔薇を左目に押しつける。
すると左目は真っ黒……。どうやら花瓶の水は黒い水……。
男X唇。
男Y………。

 男Y、さらに抗議を試みるが、言葉は口をついて出ず―。
男X、見守っている……。
いつしか、まるで「ひそひそ」が「ひそひそ」を呼んでいるかのように、噂に興じる人の数はとんでもなく膨れあがっている。
「ひそひそ」の増殖、感嘆する声の増殖、嘲笑の増殖、馬鹿笑いの増殖、ついに世界は「ひそひそ」の増殖のみで満たされる。
突然―。
男Y!!!!!!!!!!!!!!(悲鳴)

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