女4 | 「首輪がはずれたって子とは、もうサブローじゃなくなったってことよね。」 | |
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男4 | 「なくなった……?」 | |
女4 | 「だってそういうことでしょ? 首輪があって、お隣に繋がれていて、それで初めて、サブローはサブローだったんだから。」 | |
男4 | 「………。」 |
男4 | 「よし。たった今、この瞬間から俺はタカハシをやめてヤマダになる。」 | |
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女4 | 「ヤマダ?」 | |
男4 | 「俺は俺本人ではなく、タカハシの大学時代の友人、ヤマダタロー。おまえは?」 | |
女4 | 「あたし?」 | |
男4 | 「お前もダメになる前に何かになれ。」 | |
女4 | 「じゃあ、ノリカ?」 |
女4 | 「すみません、通してください。」 | |
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男4 | 「ちょっとなんですか、私たちは弔問に来たんです。あなた何写真撮っ(★)てるんですか。やめてください。」 | |
女4 | 「やめてください、写(★)真撮るの。通してく(★)ださい。」 |
男3 | 「でもさ、サトル、もっと違う側面もあったじゃないか。茶目っ気があるっていうか、もともとは真面目な子だけどさ、時にとんでもなく羽目を外すような、だけど憎めない、そんなとこ、あったじゃないか。」 | |
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女1 | 「あたしはそれだけで十分いろんな顔が思い出せる。あなただって今そうやって思い出してるじゃない。」 |
女3 |
「あなたがたは何を言わせたいんですか?」 「まだ10歳の子どもが自ら命を絶った。きっとイジメが原因だ。学校に落ち度がある。あなたがたには最初っからそういうストーリーがあって、そのストーリーを埋めるための材料が欲しいだけなんじゃありませんか?」 |
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男1 |
ぷはぁぁぁあぁぁん。 |
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女4 | ぷぁぁぁぁぁぁぁん。 | |
男4 | ぷぁぁぁぁぁん。 | |
男5・男6、音に送られながら棺を抱えて出ていく。 |
男4 | 私、今日からワタナベをやめてナカムラになることにしました。 | |
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女4 | あら、ナカムラさん? | |
男4 |
はい。今までのワタナベは、(フレームの中に顔を納めて)葬ってみました。 |