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)曝されている《報道も個人情報も、独りで、どこまでも歩いてゆく。》

男3 「サブローと同じだ。」
女2 「サブローと?」
男3  「俺たちはもう首根っこを押さえられてる。俺たちを引きずり出してさらに者にしなきゃ、あいつらは納まらないんだ。」



女3 「………。」
男1 「……あいつら、何が知りたいのかなぁ」
女3 「………。」
男1 「何を突き止めたいんだ?」
女3 「………。」
男1 「突き止められない自由、知られない自由は無いのか?」



女4 「定期券。」
男2 「破棄。(捨てる)」
女4

「図書券。」

男2

「(次々捨てていたが)図書券は関係ないだろ?」

女4 「印鑑登録。」
男2 「破棄。(捨てる)」



女4 「あたしたち、過去の自分じゃなくて今の自分を捨てたんじゃない?」
男2

「いいじゃないか、それで。」

女4 「………。」
男2

「俺は誰でもない。何者でもない。やっと首輪を外したんだよ。」

女4 「………。」
  男2、ずぶずぶと台車の中に沈み込む。



女4 すみません。(客席に向かい)私も報告者の一人としてお話をしたんですけれども、このタカハシというのは私のことです。
男1 タカハシさん……!?
女4

いいんです。話させて下さい。
(客席に)あたし、あたしのケースを「不特定の会」でお話して、 追体験してもらっているうちに、改めて考えさせられたんです。あたしたち夫婦は今回のことでずいぶん不自由な思いをし、苦しい思いもしました。何より名前が出てしまったことで、もう知っている人に合わせる顔がないと思って、人の目ばかり気にするようになりました。夫はある日、旅に出たまま、未だ帰りません。気にするあまり、人に合わせる顔をなくして閉まったんです。



END

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