男4 | 「おまえ、まだ写経やってるのか?」 | |
---|---|---|
女3 | 「あと一週間で終わる。」 | |
男4 | 「一週間?」 | |
女3 | 「サトル、最後の7日間。最後の週はね、1日1日、文章量がとっても多いの。」 | |
男4 | 「………。」 |
女1 | 「どうして抗弁しないんですか?」 | ||
---|---|---|---|
女3 | 「抗弁……?」 | ||
女1 | 「やましいところないんですよね?あたしだったら電話線なんて外しません。徹底的に自分たちの無実を主張します。」 | ||
女3 | 「………。」 | ||
女1 | 「それが理屈だと思いません?」 |
女1 | 「誰だって叩けば埃の一つ二つ出るんですよ、タカハシさん。」 | |
---|---|---|
男4・女3 | 「………。」 | |
男2 | 「マスコミの側に叩く気があるのか、ないのか、そこが肝心なんです。」 | |
男4・女3 | 「………。」 | |
目の部分に黒く帯を張られた人たちの姿が浮かび上がってくる。 |
男3 | それ、ヤマモトさんのなんですか? | |
---|---|---|
女1 | ……ええ。 | |
女2 | あなた、特定されても平気なんですか? | |
男1 | ほんとに何から何まで携帯一つで特定されてしまうんですよ。 | |
女1 | ……あたし、皆さんと同じ立場の人間じゃありません。 |
女1 | ここにいる人はみんな素性を隠してる、それはそうしなくちゃならないほどの思いをしてきたから。あたしも素性を隠さなければ、それを知ることはできなかった。許されないのは、素性を隠してるかどうかではなくて、そこに悪意が隠されていること。 | |
---|---|---|
男1 | 悪意……? | |
女1 | あたしは、それは毛先ほどもないつもりでした。 |