黙って見ていた男4、老女に歩み寄って手を差し出す。 老女、その手を両手で埋りしめる。 そのまま、一瞬といわず長い時間が流れて──。 |
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男4 | ずっとオヤジの手を握ってればよかったんだ。? | |
老女 | そうね。。 | |
男4 | これはオヤジの手じゃない。 | |
老女 | そうね。 |
少女 |
一緒に食べよう。(ケーキを取り出して置きつつ)これはハルさん。これはおじさん。これはあたし。 | |
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老女 | ………。 | |
少女 | あたしも食べるからハルさん、一緒に食べよう。 | |
少女、ケーキを出して食ぺ始める。食ぺながら──。 | ||
少女 | おいしいよハルさん、一緒に食べて。あたし食べてるじゃない、おいしいから一緒に食べて。食べようよ。ハルさぁん。死んじゃやだぁっ。(涙があふれてきて)死なないで。やだよ、死んじゃ。食べようよ。食べようよ。………。 |
男2 |
その写真ならありましたよ、彼女が持ってましたから。これ。 | |
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男4 | ちょっといいですか。(と、取って見る) | |
男3 | (写真を取って)ああ、これこれ。 | |
男1 | (写真を取って)これがハルさんの新一郎なんですか? | |
男4 | (写真を取って)これ、俺ですよ……。 |
男2 | じゃ皆さん、とびっきりの笑顔でお願いしますよ。1+1は? | |
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[2]という声がする中、ストロボが閃き、シャッターが切れる。 結婚記念の「記念写真」。 と思いきや、全員が静止する中に少女、視線が一人ゆっくりとレンズか ら外れて、伸び上がって手を振る。 その視線の先から老女、ゆっくりと現れる。 やがて男たちも皆、それに気づいて笑顔で出迎える。 老女も笑顔で応えながら、ゆっくりとみんなの中に入っていく。 やがて全員、笑頻のままにレンズに視線が定まって──。 |