男4 | そいつのこと好きなんだろ? | |
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老女 | ……好きよ。 | |
男4 | お父さんより好きなんだろ? | |
老女 | そうね。 | |
男4 | 嘘ぐらいつけよ。 | |
老女 | そうね。 | |
男4 | かわいそうじやないか。 | |
老女 | 悪いと思ってるわ。 | |
男4 | 思ってんなら行かなきゃいいだろ。なんで一緒にいられないんだよ。 | |
老女 | ダメな母親ね。 |
老女 | イッコって…… | |
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男3 | はい? | |
老女 | そうお呼びになるんですね。 | |
男3 | みっともないですか、すみません。(深々と簿を下げる) | |
老女 | いいんです、そんな。 | |
男3 | この何もみっともなく動揺しました、いきなりイッコが出て来たんで。握手なんかしちやつて。ずっと海外いたもんですから。 |
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椅子に押される形で男2は部屋の中まで戻ってきてしまい──。 | |
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老女 | どうかした? | |
男1 | ハルさん、持ってきたよ。 | |
男2 | あばよ。 | |
男2、もう一度言って帰っていく。 |
男1 | 怖い? | |
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老女 | それが不思議なんだけど全然怖くないの。懐かしいの。 | |
男1 | 懐かしい? | |
老女 | 懐かしい気分になりながら思うのよ。あ、あたし、今、自分を食べてるんだって。 | |
男1 | 自分を食べてる……んですか。 | |
老女 | これまで過ごした時間。思い。そういうの食べ直してる。牛がほら反芻するっていうじゃない。似てるかしらね。あたしの血となり肉となった、いろんな出来事を食べてる。自分をあたし食べてるのよ。 | |
老女、じつと何かを見つめている。 |