ゆらゆらと日比野、アルバムを抱えて現れる……。ゆらめきながら日比野、アルバムをめくってみるが、中に1枚も写真はない。途方に暮れて歩いていると、写真が1枚、中空からハラハラと舞い落ちる。日比野、それを拾い上げると声が聞こえてくる。 | ||
幸多の声 | 「父さんは鏡を見てるんだよ。今、はっきりとわかった。」 | |
日比野、拾い上げた写真をアルバムに貼り付け、ゆらゆらぁと通り過ぎていく……。 |
真由 | (くすくす笑って)母さんやっぱり兄さんのこと言ってる。 | |
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綾子 | (一瞬、考え)あら、そういう意味じゃないわよ。 | |
真由 | 別にいいけど。 | |
綾子 | それが真由の甘いとこよね。 | |
真由 | 何がよ。 | |
綾子 | あんたからすれば不満は山のようにあると思うけど、父さんも母さんも、年がら年じゅう幸ちゃんだけを見てきたわけじゃないのよ。 |
相田 | 日比野さん、井戸の話をしたいって言ってました。 | |
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綾子 | 井戸? | |
相田 | ええ、砂漠の井戸。 | |
綾子 | ……何なんですか、それ。 | |
相田 | それを私もお伺いしたかったんですけど……。 | |
綾子 | 砂漠の井戸……? |
砂漠人2 | (アイデンテ)でたらめなことに目をつぶって、何の疑問も持たずに突っ走るほうが、よっぽど真実からの逃避だと思う。 | |
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砂漠人3 | (ちっち)だから自分でトライして失敗して挫折して。そんな経験すらできないんです。 | |
砂漠人4 | (ママン)やがて、誰がいい人なのか、わからなくなるのよ。 | |
砂漠人5 | (幸多)コミュニケーションを買うんだよ。コミュニケーションが当たり前のように存在してる時代は終わったんだ。 |
幸多 | ………。 | |
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斉藤 | なに、キツネにつままれたような顔して。 | |
幸多 | 何しに来た。 | |
斉藤 | え? | |
幸多 | 今日は予定の日じゃないだろ。 | |
斉藤 | 金のことで来たんだよ。 |