紙袋女 | (包み紙や紙袋などを投げつけながら)どうしてそうなの!どうしてそうなのよっ……! | |
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前掛け女 | 落ち着いて下さい……! | |
紙袋女 | 人の気も知らないで! | |
前掛け女 | 奥さん、落ち着いて、待って………! | |
紙袋女 | あたしの気持ちなんていっつも蚊帳の外!(弁当を投げつける)どうしてそういい加減なのよっ!(馬刺を投げつける) |
薮内、涙が止まらない……。どうしようもなく止まらない……。 微かな月光に照らし出されているかのような箱の塔。 流れる雲が月光を遮るように、急速に闇。 |
薮内 | シッ……!(と手招き) | |
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若背広男 | ……何すか? | |
薮内 | (右の部屋を指し)良平が来てるんだよ。 | |
若背広男 | 良平? | |
薮内 | ほら肝臓移植しないと助からない。安江さんの息子の。 | |
若背広男 | ああ。あれホントに良平君ですか? |
薮内 | あ……(若背広のコンビニ袋から弁当を出して)コレ持ってけ。(渡す) | |
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ピアス男 |
のり弁? | |
薮内 | 食っとけ。食っとけ。栄養つけとけ。 | |
ピアス男 | 要らないよ、のり弁なんか。別に腹減ってないし。 | |
薮内 | いいから食っとけ。王様からのプレゼントだ。 |
女の声 | もう寝た? | |
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薮内 | 寝てないよ。……ドナーが見つからなかったら良平は死ぬんだ。もう二度と目覚める ことなんかないんだ。そうだろ路子? | |
女の声 | かければいいじゃない、目覚まし。 | |
薮内 | 意味ないだろ、死ぬんだぞ、この世から跡形もなく消えるんだ。……そうだな、そうできたらいいな。目覚ましひとつであの世から帰ってこれたら……そうできたらいいな……。 |
囁き声 | 「……さんちのおじいちゃん、亡くなったんだってね」 「開いたわよ。回覧はまだ回ってきてないけど」 「こういう言い方しちゃナンだけど、奥さん、やっと肩の荷降ろせるわよ」 「よくやってたと思うよ」 「よくやってたわよ。ご主人、仕事仕事で家のことほったらかしだし、一人で切り回してたようなもんでしょう?」 |
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