ポップな音楽を合図に、きらびやかな照明が入る。 白く、がらんとした一室。スタジオである。 ファッション雑誌から抜け出たような若い男たちが数人、とびきりの笑顔でポーズを決めている。若い男の一人がモデルのように軽やかに動き始めると、ナレーションが入って―。 |
芳野 | じゃ何か? うちの親父が禿げてるってことは俺も禿げるのか? | |
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藤枝 | 禿げますよ。 | |
芳野 | 育毛剤、15のときから使ってンだぞ。 | |
藤枝 | だから芳野さんの子供も育毛剤、使うようになりますよ。 | |
芳野 | (妙に納得)……遺伝ってそういうことか。 |
途端に女C、一段と声をはりあげて泣きはじめる。 慌てた藤枝と荒野、互いに責任をなすり合う動きになって―。 ドアが開いて増岡、慌ただしく現れると、女Cを認めて―。 | |||
増岡 | 湧水さん……。 |
増岡 | ……。また一緒に頑張りましょう。 | |
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湧水 | 一緒に? 痛い思いするのは誰なのよ? 死ぬ思いして手術台にあがるのよ。体ボロボロよ、何回絶望すればできんのよっ、助けてよっ。 | |
増岡 | ………。 | |
湧水 | (はっと我に返り)ごめんなさい……。 | |
増岡 | いいんです。 |
芳野 | あんたら、人ごとだからそんなこと言えるんだ。 | |
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藤枝 | リストだって調べたでしょう? 普通、そこまでしませんよ。 | |
芳野 | だいたい担当医の先生だって自分の女房がそんなことになったら平気でいられるか? | |
増岡 | 堂元先生は女医ですよ。 | |
芳野 | 何? | |
藤枝 | 女なんですよ、堂元先生。 | |
芳野 | ……! |