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伊達
芳野
陸雄
- 藤枝
- 奥さん、来てるのか?
- 芳野
- ほら、やっぱり。
- 増岡
- それが出てっちゃったんですよ、手術室。
- 藤枝
- 手術室……?
- 増岡
- (芳野に)不安になったんだと思います。(藤枝に)手あいてるなら捜してくれないか。(行こうと)
- 藤枝
- 手術って。…堕胎するってことなのか?
- 増岡
- ………。
増岡、振り返って藤枝を見るが、何も答えずに去って行く。
息を切らして増岡が飛び込んでくる。
その増岡、かなり年若い。
- 藤枝
- ………。(顔をあげる)
- 増岡
- …ひどいのか
- 藤枝
- 意識不明だって。
- 増岡
- お前、一緒じゃなかったのか?なんで事故ったんだよ。
- 藤枝
- 騒ぐなよ!
- 増岡
- ………。
- 伊達
- …なんかマズいことになりました?
- 芳野
- (促して)何だよ、藤枝ちゃん。
- 藤枝
- 数を減らすってことですよ。
- 芳野
- 数を減らす……?
- 藤枝
- そういうことですよ、減数手術ってのは。
芳子、黙って芳野の顔を見る……。
芳野、ゆっくり近づいて芳子の肩に手をかけると、そのまま静かに堂元の方へ芳子を押しやる。
- 芳子
- …あなた。
- 芳野
- お前、いっぱい痛い思いしてきたンだろ。
- 芳子
- ………。
- 芳野
- ついでに、もうひと踏ん張りしてこい。
- 芳子
- ………。
- 藤枝・芳野・増岡、3人の男たちが見守る中、堂元と芳子は手術室へと向かって行く。
堂元と芳子、女たちが歩いて行く細長い廊下は、巨大な試験管の様にも、闇を抜けるトンネルのようにも見えて……。
女たち、消えて行く……。
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