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奥村男1 新野男2 小林男3 河野女1
男2薄いピンクってのがまた、そりゃ綺麗なんだよ。赤すぎず白すぎず。見事なバランス保っててさ。それでいて花びら一枚一枚、微妙に違ってるんだ。
男3………。(桜に目を奪われたまま、ゆっくりと桜に顔を近づけていく)
男2そういうとこ、誰もきちんと見ちゃいないんだけどさ。
男3………。(犬のように這いつくばって顔を桜に近づけていく)
男2俺は見るよ。ちゃんと見る。
男3………。(顔がくっつかんばかりに桜を見ている)

ドアの下、床との隙間から這うように、水がこぼれ出てくる。
忍び寄るように、透明の染みが広がっていく……。
けれど人間たちにとってそれは「不可視」の水である。

女1「血は水よりも濃い」っていいますよね。
男1いいますね。
女1(断定的に)嘘ですよね。
男1………。

男2、射るような視線を投げかけたまま静に桜に近づいて来て、止まる。
それからポケットから真白いハンカチを取り出し、そっと器に浸す。
途端に赤く濁った器の水が、みるみる透明に透けていく……。
見届ける男2の視線は、どこか物憂げでそれでいて静かな決意が秘められているかのようでもある。

男1お前も仕事柄、それくらい知ってるだろ。人が他人の戸籍を使う、その典型的な理由だよ、言ってみろ。
男3……多額の借金があるか……
男1岬に借金はない。
男3本人および家族に犯罪歴がある……。
男1……未知子の気持ちを考えたことがあるか。

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