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奥村男1 新野男2 柏男5
4)可視への闘い


男1……知ってるんですね?
男5………。
男1(写真を見せ)この男のこと、知ってますね?
男5………
男1(声が大きくなり)聞こえませんか。
男5………(男1を見る)
男1(写真を突きつけ)この男に戸籍、売りましたよね?
男5知らないよ。
男1じゃ写真見て、どうして逃げた?
男5(にやりと笑って)逃げるの得意なんだよ。


男2空気って写真に写るんですよ。同じ場所で撮っても、空気の違いは1枚1枚はっきり出るんです。不思議ですよね。よくほら、オーラが出てるとか言うけど、人間の醸し出す空気も一瞬一瞬、違うんですよ。そういう空気の違い、くっきりフィルムに残せた時って、なんか妙に嬉しいんです。

男5どんな人間か知ってたんだろ。戸籍ぐらいで一緒に過ごした時間がぐらつくのか?
男1君は妹を捨てた男だ。
男5………。
男1俺と君とは違う。
 男5、掴みかからんばかりの勢いで、男1の目と鼻の先にまで詰め寄る。

男5わかってたんだよ未知子さん。
男1何を。
男5在日のこと知ったら、あんたは受け入れないって。
男1………!
 突如、堰を切ったように「不可視の水」があふれ出てくる。
怒濤のように押し寄せてくる水は、透明ではなく、白く濁った水……。
そして、その「不可視の水」と同化するように、あるいは「不可視の水」をかき分けるように男2の姿……。

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