きちんと物語がありながら、それでいて作品全体がひとつの詩のような、大きなメタファーになっている。そんな舞台を創れない物か。そこを再スタートに『新版・幻想作家の書き殴る夜』は生まれました。
僕たちは言葉あふれる日々を過ごしながら、生き生きと言葉を使っているでしょうか。言葉を使いながら僕たちは、生き生きと生きているでしょうか。
書斎、のようである。 巨大な障子。片隅に古ぼけた電話機が一台。 障子はそれ自体が仕切った部屋にのしかかるように立っている。 和室の趣が色濃いその書斎に、なぜかグランドピアノ。 横には原稿用紙が高々と積み上げてある。 今、男が寝ている。 |
ひょっこり、ピアノの陰から男が三人、顔を出す。 坊主頭の男、帽子を被った男、着物姿の男。 男たちは怪訝に、あるいは緊張感をもって背広の男をのぞき込む。 だが背広男は微動だにする気配がなくて−。 |
見えているのかいないのか、<女>は三人の男には目もくれずに、ゆっくりとピアノに近づく……。 それに伴って男たちもピアノに歩み寄って……。 | ||
<女> | ……。(電話を手に立ったまま、片手で短いフレーズを弾く) | |
---|---|---|
三人の男 | ……。(いっせいに耳をすます) | |
背広男 | (微動だにせず眠っている) | |
<女> | ……。(続きの短いフレーズを弾く) | |
三人の男 | ……。(耳をすましながら背広男を注視する) | |
背広男 | ……。(微動だにせず眠っている) | |