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 きちんと物語がありながら、それでいて作品全体がひとつの詩のような、大きなメタファーになっている。そんな舞台を創れない物か。そこを再スタートに『新版・幻想作家の書き殴る夜』は生まれました。
 僕たちは言葉あふれる日々を過ごしながら、生き生きと言葉を使っているでしょうか。言葉を使いながら僕たちは、生き生きと生きているでしょうか。
1996年10月 古城十忍

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奥村宮沢賢治 松浦太宰治 越村福島
書斎、のようである。
巨大な障子。片隅に古ぼけた電話機が一台。
障子はそれ自体が仕切った部屋にのしかかるように立っている。
和室の趣が色濃いその書斎に、なぜかグランドピアノ。
横には原稿用紙が高々と積み上げてある。
今、男が寝ている。


ひょっこり、ピアノの陰から男が三人、顔を出す。
坊主頭の男、帽子を被った男、着物姿の男。
男たちは怪訝に、あるいは緊張感をもって背広の男をのぞき込む。
だが背広男は微動だにする気配がなくて−。

見えているのかいないのか、<女>は三人の男には目もくれずに、ゆっくりとピアノに近づく……。
それに伴って男たちもピアノに歩み寄って……。
<女>……。(電話を手に立ったまま、片手で短いフレーズを弾く)
三人の男……。(いっせいに耳をすます)
背広男(微動だにせず眠っている)
<女>……。(続きの短いフレーズを弾く)
三人の男……。(耳をすましながら背広男を注視する)
背広男……。(微動だにせず眠っている)

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