宮澤 | 肉体労働。頭脳労働。そして、性生活。人間はこの三つを同時に成り立たせることは悲しいかな、できないのだよ、どれか一つを捨てなければ。 |
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太宰 | (宮澤を示し)この人はほら、そっちでも主義もってたから。 |
福島 | 独身主義 |
宮澤 | 私は性欲を捨てたんだ。 |
福島 | (一瞬、?となるが)まさかあ。 |
宮澤 | 惚れたら文学などものにできませんよ。エネルギーを無駄に使うだけです。女に白い歯を見せてはいけません。 |
宮澤 | (原稿を突き出し)これ全部、無駄だと?意味がないと? | ||
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福島 | (荒い息で)……気が…すみました? | ||
中原 | 質問に答えろよ福島ちゃん……! | ||
太宰 | 僕たちが悪戯にこれ全部、悪戯に書いてきたと君はそう言うのか? | ||
福島 | ……出がらしですよ。 | ||
中原 | 出がらし? | ||
福島 | 大事なのは昔じゃなくて今でしょう?今この瞬間なんですよ。 | ||
作家たち | ………。 | ||
<女>が宮澤の手にある原稿を黙って奪ったのである。 それが福島にはひとりでに浮遊する原稿に見えていて−。 <女>はさらに太宰、中原かも原稿の束を黙って奪っていき−。 | ||
福島 | (恐怖が走り)…ちょっとぉ。ちょっとこれ、どういうことなんすか?原稿、勝手に浮いちゃってますよ。浮いてますよね? | |
<女> | これは今までの頂き物、記念にすぎないんです。 | |
宮澤 | 君は……? | |
福島 | え?みんなしてなに固まってンですか。僕も固まっちゃいますよ。 | |
<女> | これじゃしょうがないのよ。新しい言葉を紡いでくれなきゃ。 | |
中原 | おさき? | |
福島 | え? | |
中原 | おさきか? | |
福島 | 誰かいるんですか、そこに?誰がいるんです? | |
<女> | ………。(微かに声をあげて笑い)お教えせずとも、あなたは、 | |
太宰 | ハチヨ……? | |
<女> | いつか私を見掛ける。 | |
福島 | え? | |
手にしていた原稿を<女>、天高く放り投げる。 | ||