<女> | 聞こえます? | |
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福島 | (電話に)……え? | |
<女> | まだ帰ってこれるのでしょう? | |
福島 | もしもし……? | |
<女> | あなたの言葉を待っている人はいるの。 | |
福島 | 誰……? | |
<女> | 届けて。 | |
福島 | もう少し大きい声で……。 | |
<女> | お願い……。 | |
福島 | もしもし……? | |
<女>ピアノを弾き始める。 ピアノに背をもたせかけていた福島、携帯電話からそのメロディが聞こえてきて−。 | ||
福島 | (はっと気づいて)里美……。 | |
福島、静かに携帯電話を切る……。 それから譜面台にある原稿用紙をじっと見る……。 さらに視線は、飛散している紙ヒコーキへ……。 別々の方向から探るように作家たち、現れて−。 |
手にしていた原稿をピアノに入れると福島、軽く深呼吸ひとつ、いざ、ピアノを弾き始める。 メロディが流れ始める……。 その中で紙ヒコーキの原稿を拾っては宮澤、ピアノに入れる。 やがて太宰も飛散した原稿を集めてピアノに入れ始める……。 |
福島 | はい、福島。……聞こえるよ。ちゃんと聞こえてる。今からそっちに帰るよ。帰れそうな気がするんだ。 |
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