女3、外の待合室を出ていく。 女1、男1から受け取った封筒の中を取り出してみる。 離婚届。男1の署名と押印がある。女1,じっと見つめ、やがて目を上げる。 |
女4 | ここに来る人ってみんなバリアあるでしょ? | |
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女1 | バリア……? | |
女4 | 見て見ぬ振りするっていうか、最初っから目を合わせないっていうか。ま、はしゃぎまわるわけにはいかないだろうけど。 |
女1、ひったくるようにハンカチを奪い返す。 壊れたレコードのような男0の言葉の繰り返しがぴたりと止まる。 |
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男0 | 貸して、もらえないんですか? | ||
女1 | ……誰か…… | ||
男0 | 貸してもらえないんですか? | ||
女1 | ……人殺し。 |
男2 | 馬から振り落とされる、というか、降りることはできないんですか? | |
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男1 | 手綱がぐるぐる巻き付けてあるんですよ、手首に。 | |
女0 | ………。(自分の手首を見る) | |
男0、どこからともなく現れる。馬に跨り、手綱を引きつつ、滑るように通り過ぎていく。 | ||
男1 | それでなす術もなく、ただただ手綱を引きながら、ただただ滑るように川を渡ってゆくんだそうです。 | |
男2 | ………。 |
男2、男1の隣の馬に跨って、ゆらゆら揺れ始める。 | |||
男2 | 覚えてます? | ||
男1 | え……? | ||
男2 | いつからこういうのに乗らなくなったかなあって。 | ||
男1 | ……忘れてますね。(女0に)おまえは覚えてるか? | ||
女0 | 1998年5月6日。 | ||
男1 | ───。 | ||
女0 | ディズニーランドに行った3日後に殺されたんだよ。 |