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小嶋あきら
ヒロミすげぇよ。
オサナイあぁ?
ヒロミ風、びゅんびゅんくる。
オサナイ……ガキか、おめぇは。
ヒロミこないだ代ゼミの屋上行ったら、すっげぇ風吹いてて、こんな感じだった。
オサナイいいから下りろよ。
ヒロミフェンス越えて、端っこ立つだろ。風がすげぇんだ、びゅんびゅん来て、このまま落ちたら新聞に出んのかなぁって。
オサナイ出るかよ。
ヒロミ出るよ。そのくらい出たっていいだろ。

エイジ君はもう死んでる人?
あきらどうかな。
エイジ……。
あきらあたしね、今日はお昼もちょっとだけここ来たの。
エイジ何時頃?
あきら2時くらいかな。もう、抜けるような青空。すっごく気持ちよくて、あの青空見なかった?
エイジぐっすり眠ってた。

  エイジ、シャッターを切る。
とたんにキャンパス一面に、抜けるような青空。
時に薄く筋を引いた雲が流れ、まるで天から切り取ったような青空がそのままそこにある。
ファインダーから目を外したエイジ、キャンバスに気づいて−。
エイジあ……!
あきら(見えていて)うん。
エイジ君の仕業なのか?あれが君の青空?
  あきら、キャンバスに歩み寄ってエイジの署名を示し−。
あきらエイジ、の青空なんじゃない?

オサナイ写真は?
エイジえ?
オサナイあきらを撮ったって言ったろ?また真っ白だったのか?
  エイジ、あきらを撮ったそのプリントを出してみて−。
エイジ君が写ってる……!
オサナイ何?
エイジあきらを撮った写真。あきらの代わりに君が写っている……!

オサナイなんだよぉ、これっ……!
エイジ(指して)髪の毛だろ、あれ。
オサナイなんだってんだよっ、俺のベッドだぞぉっ……!
  オサナイ、ほとんどがむしゃらに中を押し広げるようにして開けてみる……。
荒い息づかいが微かに残って−。
オサナイ死んでるよ……。
エイジ女の子だ。
  途端に、キャンバス一面に青空。
はっと気づいて振り向くエイジとオサナイ……。
2人、目を奪われ吸い込まれるようにゆっくりと立ち上がって−。
一切が、闇。

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