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小嶋あきら
  オサナイ、面倒くさそうにトランクをベッドの下に降ろし、シートをベッドの上に広げる。
エイジトランクに移すつもりなのか?
オサナイこれは俺のベッドだ。
エイジ移してどうするんだ?
オサナイ勝手にベッドん中、入り込んでンだぞ。そんなの許せるか?
エイジ移したって同じだよ。
ヒロミそれって犯罪だろ、死体遺棄ってやつ。
オサナイ何もしなかったら人殺しだ。
エイジ正直に話した方がいい。
オサナイ何を?誰が信じるよ?俺のベッドに死体が入っていました、知らないうちに入ってました、あぁ?そんなこと誰が信じンだ?

オサナイ(写真を出して)これ、いつ撮ったんだ?あきらを撮ったのに俺が写ってたんだろ。ほかにも俺が写ってる写真、いっぱいあンじゃねぇのか?
エイジ………。
オサナイ何だよ、その目は。
エイジ………。
オサナイその目をやめろって言ってんだ。

  オサナイ、突然エイジに掴みかかろうとして−。
途端に、キャンバスにあきらの姿が浮き出てくる……。
そして入れ替わるように、今度はエイジの姿。エイジとあきら、あきらとエイジ。2人の姿はクロスするように重なり続けていく…。
驚いて目を奪われているオサナイ。

オサナイイキがんなよ。何くっついてンだよ。キスしてほしいのか?
  不意にエイジ、オサナイに掴みかかる。
虚を突かれたオサナイ、ブランコに体を打ちつけてよろける。
エイジ、すかさずブランコのチェーンをオサナイの首に巻きつけて締め上げていく……。
オサナイお前、誰だ……?
エイジ……少年A。

オサナイあいにく、こっちも少年Aなんだよ。
  獲物を追いつめるように近づいていくオサナイ……。
オサナイがその距離を一気に詰めようとした、その時。
突然、キャンバスに抜けるような青空。
エイジ……あきら!
  オサナイ、弾かれたように駆け寄ってキャンバスにカッターの刃を突き立てようとした、その一瞬。
キャンバスの青空に血飛沫。おびただしい鮮血がキャンバスを染める…。
オサナイ、ぎょっとなって立ち尽くす……。

あきらあたしもね、許せないこといっぱいあった。
オサナイ……俺のせいなんだろ?
あきらでもこうなって初めて、全部許せるって思えちゃったの。
オサナイ………。
あきらだから何とも思ってない。
オサナイ………。
あきらそれを言いたかった。
オサナイそれでいいのかよ?
あきら怖いよ。
オサナイえ?
あきらあたし、死にたくないよ。怖いよ。

  ぼんやり佇んでいるエイジ、オサナイ、ヒロミ……。
丈高い草のびっしりと生い茂る原っぱ、不意に風もないのに夏草がさわさわとかすかに揺れて−。
あきらがゆっくりと通り過ぎていく……。
誰に気づかれることもなくあきら、ゆっくりと通り過ぎていく。
もの憂く流れているノイズ……。
静寂を打ち破るように、猪瀬と芦原が青ざめた顔でやってくる。
少年たちを見てその足が止まる。
エイジ、猪瀬に気づいてゆっくりと立つ。
その視線、ぶつかったまま−。



THE END



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