男1 | (爆弾の落ちる音を真似て)ヒュ〜ゥ〜ゥ〜ン、ダンドゥンドンダァン! | |
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少女 | (見上げて)ますます激しくなってきやがった。 | |
老女 | 待つしかないわ。じっと。止むまで。 | |
少女 | (立って)俺、行って来る。 | |
老女 | 行ったら自殺行為よ。 | |
少女 | (男1に)爆弾。 | |
男1 | ヒュ〜ゥ〜ゥ〜ン、ドゥガガドンドォン! | |
老女 | やめて、バカなことは。雨のように焼夷弾が落とされてるのよ。今、防空壕を飛び出したら間違いなく死んじゃうわ。 |
老女 | 給食も食べてないの。 | |
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男1 | ………!(老女を見る) | |
老女 | 食べようにも学校行ってないみたいだから。 | |
男1 | まるっきり? | |
老女 | じゃないと思うけど。居心地よくないらしいわ。 | |
男1 | 拒食症なんですか? | |
老女 | どうだかねぇ。 |
遠くから空襲警報の音が聞こえてくる……。やがて警報は怒涛のように、老女の全身を裂くほどに聞こえ始め、Yシャツ姿の学生たち(男2・3・4・5)が現れてくる。 空襲警報が不意に途切れて−。 |
老女 | (不意によろめいて倒れそうになる) | |
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少女 | (驚いて)ハルさん……!(慌てて支える) | |
老女 | (笑みを浮かべようとしつつ)イッコちゃん、手を、手を握らせて。 | |
少女 | (手を握りつつ)どうしたの? 大丈夫? |
老女 | それを気づいてあげるのが学校なんじゃないんですか。母子家庭だったらなおのこと、先生、気づいてあげてもいいんじゃないですか。 | |
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男5 | (ため息混じりに)……困るんだよなぁ。 | |
老女 | 困るんですか。 | |
男5 | 無茶ですよ、そんなこと分かれって言われても。 |
男5 | これで学校、来るんだな? 先生の言うこと何でも聞くんだな? 気がすんだんだろ……! | ||
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老女、平手で激しく男5の頬を打つ。 と、打ったほうの老女、途端に腕を押さえて屈み込む……。 |