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新野男X 越村男Y
4) ミラー(The truth is one.)



 声なき悲鳴とともに男Y、男Xに体当たりしていく。
すぐに形勢逆転。男Xは力の限り男Yの首を締めあげつつ―。
男Xこの顔を誰が許す、え? こんなヤツ誰が相手にする、言ってみろ、答えてみろさぁ、誰が許す……!

映子あぁ……。あたしね、いいこと思いついたの。(バッグの中を漁りつつ)思いついたらなんだか居ても立ってもいられなくなっちゃって。(バッグから手鏡を二つ出して男Yに見せ)これ。
男Y(どきり、と)……鏡?
映子恭造君シャイだから。(男Yに手鏡を一つ握らせ)間接的にだけど、これなら顔を見て話せるでしょ? (自分でも一つ持ち鏡越しに)こうやってホラ、あたしは恭造君の、恭造君はあたしの顔を映して鏡に話すの。恥ずかしくないでしょ?
男Y………。
映子(鏡越しに)ちょっと、変?
男X変だよ。

映子(目を合わせず)後悔したわ。ううん、後悔してるの。前はねどうしたって応えるわけにはいかないって、そう自分に言い聞かせて自分を縛ってた。そういうところあった気がするのよ。でも今なら新しい世界に行ける、踏み出せる。傷口をまた引き裂くことになったとしても、今からでも遅くないんじゃないかって、そう思えるようになったの……。
 いつのまにか男Yだけでなく、男Xの手にも手鏡……。
手鏡をゆっくり動かして男Xと男Y、それぞれの鏡面で映子を捕らえ―。

蓮見だから鏡を見るのか?
男X・Yそうだよ。
蓮見俺が知らないとでも思ってるのか?
 嵐のように蓮見、カーテンを引きちぎって剥がす。
男X・Y、戦慄が走る。
果たしてカーテンの奥にあるのは窓ではなく壁。
それもびっしりと鏡に覆い尽くされている……。
壁一面に大小さまざまの姿見、手鏡、欠けた鏡、ひび割れた鏡、夥しい数の鏡が所狭しと張りつけてある……。
乱れる呼吸を男X・Y、それぞれ必死に抑えている……。
蓮見……お前は病気だ。

 互いにうなづいて男X・Y、改めて鏡に視線をあげたその時―。
鏡だらけの壁がぱっくり割れる……。
その裂け目から、顔に鉛のような銀一色のマスクの張り付いた人々、口々に「ひそひそ」しながら後から後から現れてくる……。
戦慄が走る男X・Y、身がすくみ、やがて体が震え、震えは止まらず……。
「ひそひそ」とマスクの人々、男Xを見ては嘲笑い、男Yを見ては薄ら笑い、笑い声はやがて瀑布のように天から轟き渡り―。
ついには男X・Y、自らの体を支えられず倒れてしまう……。


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