[Return]

松浦走次 奥村 新野走太郎 越村ツメタ郎
走次お前に言われる筋合いはない。
のりこやめて羽山君! いい年した大人のすることじゃないわ。
走次(のりこに)うるせぇよ!
のりこ羽山君…。
走次大人でも、大人でも、僕たちは何にもできないじゃないか。どうすることもできないじゃないか!
ツメタ郎ガキのくせにいきがるんじゃねぇよ!(とまたつかみかかる)

走次まだだよ、行かないで。まだもっと鮮やかに、ここにいて。記憶するから。鮮やかに記憶するから、もっとここにいて。


 走次、急いでランドセルからアンパンを取り出し、焦って食べようとする。
と、走太郎と祖父が「現在の走次」のもとへそっとやってくる。
そして3人は同時に1個のアンパンをおいしそうにかじる。
続いて父と母がそっとやってきて、再び3人は同時に1個のアンパンをおいしそうにかじる。
満面の笑顔にあふれた、アンパン1個だけの家族の食卓。
顔をくしゃくしゃにして笑い転げる走次。
やがて家族たちは、やさしい笑顔を残しつつ走次から離れていく。
そして、静かにいなくなる家族たち。
誰もいないリビング。

のりこ大人なんだから、泣いちゃったらいけないよ、ずるいよ。
走次(パンを受け取って)でも僕、本当は8歳なんだよ。
のりこあたしだって9歳よ。
走次だから泣いていいんだよ。
のりこいけないよ。
走次いいんだよ。
のりこいいの?
走次いいんだよ。

[Return]