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松浦走次 奥村 新野走太郎
走次お父さんもお母さんもお兄ちゃんも、すぐ来る。すぐ来るから。(頁を繰りつつ)畜生、どこだよ、どこに載ってるんだよ?
祖父ま、ええか。あいつらはいっつもおらんかったからの。
走次あった、ここだ。「この草を目に搾りかけるのだ。その汁の素晴らしい効きめに、迷いはたちまちとりのぞかれるだろう」
祖父わしはな、オゼンになる。オゼンになればずっと我が家と一緒じゃ。
走次草って何だよ、これじゃ何の草か分からないじゃないか。
祖父それじゃ走次、長い間ありがとう。

 お葬式。
喪服姿で応対している父・母。
親戚の人たち、平野さん、五味さんなど弔問客が訪れる度に黒白の幕が揺れ、まるで嵐のよう。
あちこちで挨拶が交わされ、激しく人が行き交う。
走次はその真っ只中にいながら、じっとそれらの様子を見ている。

 走太郎が現れる。見まごうほどの立派な青年になっている。
走太郎いずれ俺たち、結婚します。
父・母走太郎…!
走次…お兄ちゃん。
走太郎走次、小箱は姉さんになるんだぞ、よろしくな。

走次小箱さん…!
小箱走次君、これからもよろしくね。
走次はい、よろしくお願いします。
小箱ちょっぴり寂しい?
走次平気です、僕は大人だから。
小箱ほんとにしっかりしてるのね、走次君は。

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