[戯曲部門]最終ノミネート作品、
翻訳初演
劇団ワンツーワークス #30
『グロリア』
[作]ブランデン・ジェイコブズ-ジェンキンス(Branden Jacobs-Jenkins)
[翻訳]小田島恒志・小田島則子
[演出]古城十忍
2020年2月27日(木)~ 3月8日(日)
赤坂RED/THEATER
文化庁文化芸術振興費補助金
(舞台芸術創造活動活性化事業)
独立行政法人日本芸術文化振興会
PRODUCTION NOTE
古城十忍の『お触れ書き』
想像を超える、驚きの展開。
意表を突く、「事(こと)の顛末(てんまつ)」。
あまりの面白さに無我夢中、
私は一気に戯曲を読み終えた。
マスコミの人間は基本、よく喋る。黙っていては取材にならないし、会議や打ち合わせで寡黙を通せば馬鹿だと思われる。
ただし、喋りすぎは嫌われる。取材に来て自分の意見ばかり言う奴は仕事の本質をわかってないし、会議や打ち合わせは、対立意見を論破して相手をこてんぱんにやっつける場ではない。
そんなことは誰しも頭ではわかってはいるが、それでも何かとよく喋る人は少なくない。なぜ、こんなにもこの人はよく喋るのだろう。しかも喋っていることのほとんどは愚痴か、噂話か、悪口だ。何が、こんなにもこの人を喋らせるのだろう。そして周りの同僚たちもなぜ、「ええい、うるさい」と怒鳴ったり、無視してスルーしたりせず、負けじと言い返すのだろう。火に油を注いでいるのがわからないのか、とそんなことを考えながら取り憑かれたようにページをめくった。
あ、これ、『グロリア』の戯曲の話です。そんなふうに次から次へと私は読み進め、読み終わったときには「これ、上演しよう」、そう決意してました。
それほど面白かったんです。こんなにも夢中になって戯曲を読んだのは久しぶりのことでした。
作者は、ブランデン・ジェイコブズ-ジェンキンス。アメリカはワシントン生まれの劇作家で、写真の通り笑顔の素敵な34歳。
でもこの笑顔とは裏腹に、この若き劇作家の書く登場人物はそろいもそろって、いまいましい奴ばかり。『グロリア』がホントに面白かったので、続けて2014年に「最優秀ニューアメリカン・プレイ賞」を受賞したこの人の『アプロプリエイト』という戯曲も読んだのですが、こちらの登場人物もまた強烈。「ああ、こんな人とはお近づきになりたくない」というキャラクターのオンパレード。
もちろん、『グロリア』にも多くの「痛すぎる人」や「困ったちゃん」が登場します。ほかにも「周りが見えていないかわいそうな人」とか「周りからオブジェとしてしか見られていないかわいそうな人」とか。ほんと、いるんだよねえ、どこの職場にも、こういう人たち。
『グロリア』はもちろん、現代のお話です。
舞台はニューヨークの雑誌社からロサンゼルスのテレビ番組制作会社へと移っていくものの、登場人物は全員がマスコミの職場で働いている人たち。
だから、この文章の冒頭で、「マスコミの人間は……」と書いたのですが、かく言う私も昔はマスコミの世界(新聞社)にいたわけで、面倒臭い同僚記者は確かにいました。でも時に、その面倒臭い人が驚くようなスクープ記事をものにしたり、困ったちゃんがいきなりエースとして起用されたりするので、人生、わからないものです。……などと他人事のように言ってますが、私もいろんな人から「面倒臭い困った野郎」と思われている可能性は大いにあるわけで(それもかなりの高確率で)、『グロリア』を上演するということは、そういった人々ととことん向き合い、その人たちのウソ偽りない葛藤や憤りを丹念に掘り起こすこと。それが今回の演出の仕事だと肝に銘じているところです。
……と、ここまで書けば、「なるほど、『グロリア』はそんな「痛すぎる人たちの人間模様」を描いた芝居なんだなと思われるかもしれませんが、この戯曲はそれだけにとどまりません。まさかまさかの、想像をはるかに超える展開。意表を突く、「事の顛末」。
私は読み進めるうちに、「これはホラーだ……」と身震いし、「これは人間の本質を突いた人生の指南書だ……」と恐れ入り、人の哀れ、世の無常をイヤというほど噛みしめることになったのです。人間なんてちっぽけだ。人生なんて行き当たりばったり。得体の知れない大きな流れに呑み込まれるだけ。それでも人はこの時代に生きていかなければならない、と。
というわけで、ワンツーワークスが約3年ぶりにお届けする久々の翻訳劇。見どころは満載です。
まず、初めてタッグを組んだ小田島恒志・小田島則子さんの翻訳が実に、実に素晴らしい。意訳のさじ加減、日本語のチョイスがお見事。「翻訳とはこういう仕事のことをいうのか」と感激しました。
出演する俳優も出演者13人のうち、10人がオーディションで選んだ人たちで、そのほとんどがワンツーワークス初参加。これだけでもう、今までとは違うチームワークが芝居に反映されそうで、演出家としても今から稽古が楽しみです。
恒例のアフターイベント、「スペシャル対談」にはその小田島恒志さん、英米の翻訳劇に詳しい演劇評論家のみなもとごろうさんをお招きします。「出演者トーク」も今回は趣向を凝らし、『グロリア』の各場面ごとに、その場面に出演する俳優が一堂に会して語り合います。大半が初顔合わせの俳優たちが、「痛すぎる人」や「困ったちゃん」にどう挑み、どんなホラーや人生の哀れをつくり出そうと試行錯誤したのか。つまり、作品理解を深めるための企画がずらり。
そして何より、私が久々に惚れ込んだ海外戯曲。ぜひ、万難を排して観てやってください。
2019年11月24日 古城十忍
FOR THE
PERFORMANCE
上演に寄せて
PERFORMANCE 上演に寄せて
誰もが変わりゆく時代に
しがみついて生きている。
[演出]古城十忍
このところ「実話」、あるいは「実話に基づく」とうたった映画やドラマがなぜか増えている気がするのだが、この『グロリア』という戯曲は「そもそも実話とはいったい何なのか?」という問いを否応なく突きつけてくる。「いったい何をもって実話と言えるのか」。戯曲を読んで私は、まずこの視点に非常に感心し、心が躍った。
当たり前の話だが、実際に起こった事件というものは、すぐに消費される。いや事件に限らず、「流行」であったり「時の人」であったり、つまりマスコミに取り上げられて世に流布されたものはあっという間に消費され、そして風化し、忘れ去られていく。しかも圧倒的な情報過多時代の今、消費されるスピードは凄まじく速くなっている。それがたとえ、多くの人を巻き込んだ社会問題、凶悪極まりない殺人事件であっても。
時が経って風化してしまうと、「その時、本当はどうだったのか?」ということを的確に把握することは難しい。人間の記憶はそれほど正確ではないし、それどころか都合よく頭の中で事実をつくり変えたりする。だから実話に基づいて製作された映画やドラマは、そもそもが危うい土台の上に成立しているものだと言えなくもない。
また、映画化・ドラマ化されて世に出た時点で、それは新たな事件(商品)としてすぐに消費の対象にされてしまい、これまた忘れ去られる運命から逃れることはできないだろう。
ただ、いつまで経っても事件を風化させることができない・忘れることができない人たちもこの世にはいる。それは当該事件の被害者・加害者、その家族(場合によっては遺族)たちだ。
彼らは何年経っても生々しい事件の記憶を消し去れず、その後遺症で時に人生を大きくねじ曲げられることもある。戯曲『グロリア』はこうした当事者たちの「その後」にも焦点を当てており、これが私が心を揺さぶられた第二の視点だ。
『グロリア』の当事者たちは、なんとか事件を消化して過去へと追いやり、次の一歩を踏みだそうと必死に変わりゆく時代にしがみつく。
その愚直なまでの「あがき」を見せられると、事件に関わりがあろうがなかろうが、必死に時代にしがみついて生きていくしかないのは誰もがそうだ。みんな、そうだ。そう思わされて私は、この戯曲の深さに恐れ入ってしまう。 2020年2月20日 古城十忍
ACTORS
出演
SCHEDULE
公演日程
2月28日(金) 19:00の回 |
公開ダメだし 「ガチで見せます!!」 |
出演者の誰か×古城十忍 | |
すっかり恒例となった観客の皆さんの前での演出家による本気のダメ出し。この日の本番での納得のいかないところを演出家が「なぜ?」「なんで?」と執拗に俳優を追い詰める。もちろん、些細なミスもあげつらう。爆笑の中にも、演出家と俳優たちは『グロリア』にどう向き合い、その何を描き出したかったのか。つくり手の意図も垣間見える丁々発止のやり取りは必見です。 ▼ 詳細を開く▲ 閉じる
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2月29日(土) 19:00の回 |
スペシャル対談「イギリスのアメリカ演劇受容」 |
みなもとごろう(劇評家)×古城十忍 | |
ゲストのみなもとごろうさんは年に約1カ月はロンドンを中心にヨーロッパ各地で芝居を観ている演劇評論家で、最新の海外戯曲の事情に詳しい。同じ英語圏の演劇でもアメリカ演劇とイギリス演劇は大きく違うと言われるが、いったい何がどう違うのか。そもそもイギリスではどの程度、アメリカ演劇が上演されているのか。(そもそも日本の戯曲は上演されているのか?)『グロリア』もアメリカ生まれの芝居ながら(2015年初演)、ロンドンでも2017年に上演された。アメリカで人気を博した『グロリア』はイギリスではどう受け止められたのか。自身もイギリス留学の経験を持つ古城十忍と話題満載で盛り上がります。 ▼ 詳細を開く▲ 閉じる
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3月1日(日) 14:00の回 |
バックステージツアー「細部をじっくりと」 |
案内人:奥村洋治+小山広寿 | |
「ウェルカム・トゥ・ザ・バックステージ・ツアー!」。開始を告げる元気のいいコンビは、ワンツーワークスの(自称)宝役者、奥村&小山。今回はベンチ・スタート(出演なし)ですが、この出番に、ここぞとばかりに声を張り上げる! ついさっき、皆様が魂を持っていかれた(はずの)舞台上に、実際にご自分の足で立ってもらおうというこの企画。客席からは見えなかったあの壁の奥は……あらあ! こうなってんの!? わくわく。ああ、いてもたってもいられない!乞う、ご期待! ▼ 詳細を開く▲ 閉じる
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3月2日(月) 19:00の回 |
スペシャル対談「翻訳から見える『グロリア』」 |
小田島恒志(翻訳家)×古城十忍 | |
本作の翻訳を手掛けていただいた小田島恒志さんをゲストに、翻訳家の視点から『グロリア』を紐解いてもらいます。場面が進むほどに全体を覆うムードが変わっていくこの戯曲。原作(英語)戯曲にはその変化するムードを規定する書き方がされているのか。また、登場人物のキャラクターはどんな言葉や言い回しで特徴づけられているのか。さらには、日本語ではなかなか言い表しにくいニュアンスなど、翻訳する上で苦労したのはどんなことなのか。劇作家でもある古城十忍が次々と質問を繰り出すことで、『グロリア』の全貌をあぶり出します。加えて英語圏戯曲の翻訳を多数手掛ける小田島さんに、最新の注目戯曲も伺います。お楽しみに。 ▼ 詳細を開く▲ 閉じる
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3月3日(火) 19:00の回 |
出演者トーク(1)「私たちの『グロリア』1幕」 |
北野由大+北澤小枝子+川畑光瑠+永田 涼+間瀬英正+長尾純子+関谷美香子 | |
『グロリア』の前半部分にあたる第1幕に出演した7人全員が一堂に会して語り合います。それぞれの役に懸ける思い。思い入れのある場面。好きな台詞。一筋縄ではいかない場面。胸に突き刺さる台詞。「ライブ感のある会話が何より大切」な舞台で俳優は日々何を考え、何を心に抱いて出番に臨むのか。聞きどころ満載の話題が次々に繰り出されます。 ▼ 詳細を開く▲ 閉じる
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3月5日(木) 19:00の回 |
出演者トーク(2)「私たちの『グロリア』2幕1場」 |
水野駿太朗+増田 和+北野由大+北澤小枝子+関谷美香子 | |
この日は『グロリア』の2幕1場に登場する俳優5人が揃って登壇。物語の流れが大きく変わるこの場面に、それぞれの俳優はどんな思いを持って取り組んだのか。初顔合わせの多い5人が稽古での苦労話を交えつつ、『グロリア』における自分の役の役割について真面目に、楽しく語り合います。 ▼ 詳細を開く▲ 閉じる
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3月6日(金) 19:00の回 |
出演者トーク(3)「私たちの『グロリア』2幕2場」 |
長谷川慎也+植田敬仁+間瀬英正+大原万由子+東 史子+関谷美香子 | |
『グロリア』のエンディングにあたる2幕2場を担う6人が登壇。このうち4人はこの場面にしか出演しない(待ち時間が長い)。1幕、2幕1場の流れを受けて、どんな場面にしたかったのか。どんな空気感を醸し出したかったのか。それぞれの演技プランも披露しつつ、『グロリア』という作品に対する思いを語ります。 ▼ 詳細を開く▲ 閉じる
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TICKETS
チケット
WEB予約の受付は終了致しました。
発売日
- 一般前売り開始
- 2019年12月21日(土)
料金(全席指定・税込み)
- 一般(前売)
- 4,800円
- 一般(当日)
- 5,000円
- 学生
- 3,000円
- 高校生以下
- 2,000円
- 初日割(2月27日の回のみ)
- 4,000円
- ハッピーステージ
(3月4日19:00の回のみ) - 4,000円
- *「初日割」「ハッピーステージ」チケットは前売りのみの扱い。
- *「学生」「高校生以下」はシーボーズでの取り扱いのみ。当日、会場で学生証の提示が必要です。
- *受付開始および当日券販売開始は開演の1時間前、開場は30分前です。
- *10歳未満の児童はご入場いただけません。
取り扱い
- シーボーズ
- Tel&Fax:03-3635-8686/
mail:2020onetwoworks@seabose.co.jp
- チケットぴあ
- 0570-02-9999 (Pコード:498-938)
https://w.pia.jp/t/onetwo-works/
- Confetti(カンフェティ)
-
WEB予約 http://confetti-web.com/onetwo-w30/
電話予約 0120-240-540(平日10:00~18:00)
THEATER
劇場
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【赤坂駅】(2番出口)より徒歩6分
〒107-0052
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※劇場入口はホテル入口と異なります。
お越しの際はご注意ください。
TEL:03-5575-3474
ロビー直通:03-5575-7132(公演期間のみ)
STAFF
スタッフ
- [美術]礒田ヒロシ
- [照明]磯野眞也
- [音響]黒澤靖博
- [衣裳]友好まり子
- [舞台監督]尾崎 裕
- [制作]藤川けい子
- [演出助手]日置なお/田邉かおり
- [舞監助手]窪田 亮/小山広寿
- [衣裳助手]増田 和
- [小道具]原田佳世子
- [票券]川井麻貴 シーボーズ
- [イラスト]古川タク
- [デザイン]西 英一
- [スチール]富岡甲之
- [舞台写真]黒木朋子
- [webサイト制作]吉田淳一
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- [協力]
- アイズ/アトリエトモヨシ/天の原演劇工房/K Sound/後藤輝之 Gプロダクション/タクンボックス/一二の会
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- [助成]
- 文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術創造活動活性化事業) 独立行政法人日本芸術文化振興会
- [製作](株)オフィス ワン・ツー