劇団ワンツーワークス #23
『消滅寸前(あるいは逃げ出すネズミ)』
[作・演出]古城十忍
2017年10月20日(金)~29日(日)
中野ザ・ポケット
平成29年度文化芸術振興費補助金
(舞台芸術創造活動活性化事業)
平成29年度(第72回)文化庁芸術祭参加公演
住民による行政サービス代行が始まって
数年が経つ。
代行の担い手である住民組織の委員たちは、
それぞれ難しい局面に立たされていた。
義母の介護で家を空けにくくなった者。
息子の進学に合わせて都市部への
引っ越しを考えている者。
地区一番の農地を持ちながら周辺土地が
荒れ放題となり困り果てている者。
さまざまな事情を抱えた委員の全員が集まって
今日、ついに重大な結論を下すこととなった。
議題はたった一つ。
「この先、広庭地区を存続させるのか、
それとも消滅させるのか」
市の地域振興課の担当職員も
交えて行った多数決。
その結果はなんと、全員が「消滅賛成」。
なぜ住民委員は全員が消滅に手を挙げたのか。
本当に全員のふるさとである
「広庭地区」はなくなってしまうのか。
驚きの結果に全員が驚くが、驚くようなことは
これを機に立て続けに巻き起こっていく……。
上演に寄せて
「今、そこにある危機」をどう認識するのか。 古城十忍(作・演出)
かれこれ30年以上も前の話であるが、地方紙の新聞社に入社早々、私は新米記者の一員として、社のお偉い方の訓示を聞かされていた。
「これからは地方の時代だ。君たちも我が社に入社したからには、地方に骨を埋める覚悟で、世のため人のために尽くしてくれたまえ」
地方の時代なんて来るもんか。ひねくれ者の私は、聞きながらそう思ったことを今でも鮮明に覚えている。
そして、残念ながらと言うべきか、ひねくれ者の予想は見事に当たった。
あれから30数年。人口はもちろん、経済・文化、あらゆる面で「東京一極集中」は時代が進むとともに加速し続け、片や、地方では閑散として寂れたシャッター街が増え続け、東京と地方の差は埋まるどころか、ますます開く一方という状況が続いて2017年に至っている。
この「差」はこのままでは近い将来、大きな弊害を生むと言われながら、結果として効果的な対策を何らとってこなかったことは大いに問題であったが、その東京でも2025年(23区に限れば2030年)から、いよいよ人口減少に転じるという。
いわゆる「少子化」の問題もまた、ずいぶん前から、いずれ大きな困難をもたらすと指摘されながら合計特殊出生率はいっこうに上向かず(2016年は「1.44」)、改善の兆しもほとんど見られない。
2020年までは「東京オリ・パラ」で浮かれてもいられるだろうが、祭りが終わってしまえば「レガシー」として我々国民に残されるのは、いかにして「東京一極集中」「少子化」に立ち向かい解決していくのかいう超難問だけなのではないかと、今から私は暗澹たる気持ちになっている。
と言いつつ、この「二大問題」が全国各地に深刻な惨状をもたらす頃には、たぶん私はもうこの世にはいないので、まだ素知らぬ顔をして生きていられるが、今の10代・20代が今の私くらいの年齢になった頃には、恐らく彼らはとんでもなく大変な目に遭っていると思う。
まだまだ夢を食べて生きている年頃の若者に、誰かが「おい、危機はすぐそこにあるんだぞ」と切実に忠告したとしても、そんな悲惨な時代なんて来るもんか、と新米記者の頃の私のように恐らく相手にはしてくれまい。それほどに、この二大問題は見えづらいし、実感を持ちにくい。
今から3年前の2014年、「日本創世会議」が将来的に存続するのが困難、と予測される自治体のリストを「消滅可能性都市」と名付けて発表した。
この予測によると、全国1800市区町村のうち、実にほぼ半分にあたる896自治体(49.8%)が消滅してしまいかねないという。このまま手をこまねいていると、シャッター街どころか、ゴーストタウン(無居住化地域)が全国津々浦々に出現してしまうわけで、その頃の日本は現在とは相当に様相の異なる「すさんだ国」に変わり果ててしまっているかもしれない。
「あのリストを公表したインパクトは絶大でしたね。そこは評価できると思います」
今回の新作脚本を書くにあたって取材をお願いした、島根大学の作野広和教授はきっぱりとそう言った。
「問題の深刻さを広く認識させましたから。それまで真剣に受け止めてこなかった大半の人に冷水を浴びせるくらいの効果はあったんじゃないですか」
すいません、私も大半の一人です。そう心の中で反省しつつ、専門家の話に聴き入った。作野氏は地理学の教授で、中でも「中山間地域問題」「農業・農林問題」「過疎地域問題」などに詳しい。数々の調査・分析に基づく氏の話は、実に説得力があり、二大問題の危機に対する私の意識はまだマシなほうだろう、などと思っていた私の上っすべりな自負心はことごとく打ち砕かれた。危機は本当に、すぐそこに来ている。いや、すでに日本のあちこちを蝕み始めていたのだった。
「人口は減り続け、高齢化率は上がり続ける。すでに島根県の一部では行政サービスもままならなくなっていますが、これはいずれ全国で起こることになるんです」
取材先から帰京した私は「二大問題」関連の書籍を読みあさり、すでに書き始めていた脚本は頭から書き直すこととなった。そして脚本を書き進めるほどに、「この超難問に出口はあるのか?解決策はあるのか?」と自分に問い続けることになったのだが、もちろん明確な答えはない。
だが私としては、架空の某市という設定ではあるが、「紛れもなく、今現在の日本にある現実」を文字として起こすべく悪戦苦闘したつもりである。
2017年10月
日程
10/20金 | 21土 | 22日 | 23月 | 24火 | 25水 | 26木 | 27金 | 28土 | 29日 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
14:00 | 2 | 3★ | 6 | 10 | 12 | |||||
19:00 | 1 | 4★ | 5★ | 7★ | 8★ | 9 | 11★ |
★…アフターイベントあり
22日(日) | バックステージ・ツアー 「全部、見せます」 |
案内人:奥村洋治+小山広寿 |
「Welcom to the backstage tour!!」。今やおなじみ、奧村洋治の案内で繰り広げられる舞台製作の裏話。劇場の構造はどうなっているのか、舞台美術を立て込むのに、どんな苦労があるのか。新作となる今回も美術プランの解説をたっぷりとお届け。その後は皆さん、舞台にあがっていただいて全部をお見せします。芝居づくりのスタッフワークが覗ける貴重な体験。回を重ねるごとに、ツアー人気は急上昇。お見逃しなく。 |
23日(月) | 公開ダメ出し「ガチでやります」 | 出演者の誰か×古城十忍 |
まるで稽古場の様子を再現するかのように観客の前で「ガチ」で行うダメだし。なのに客席はなぜか毎回、爆笑の嵐。そんなに人の不幸は楽しいものなのか。小さなミスも逃さず、戯曲の解釈や演技理論まで持ち出して俳優に改善を迫る演出家。人前でイジられ、恥をさらしてなるものかと、この日の演技にはいつも以上に熱が入る俳優たち。それでも誰かは舞台に呼ばれてしまう(一人とは限らない)。「芝居は生もの」ならではのイベント。さあ、今回は誰が血祭りにあげられるのか。 |
24日(火) | 出演者トーク(1)「俳優としての心得」 | 中村まり子+みょんふぁ+関谷美香子 |
俳優業を主軸に置きながら、翻訳や通訳などでも演劇と深い関わりを持つ中村まり子さん&みょんふぁさん。「作品に向き合うとき俳優として何を軸にしているの?」「役づくりの方法は?」「演出との付き合い方は?」「ほかの俳優には何を思う?」「新作ってどう?」。立場の違う3女優が、俳優の面白さや魅力、そして苦労や難しさも大いに語り合う。ノリノリ女子トークになるのは必至。俳優を志す方にとってもたぶん必見。乞うご期待! |
25日(水) | 出演者トーク(2)「戯曲をどう読むのか」 | 武田竹美+田村往子+山下夕佳 |
戯曲というと堅苦しいけれど、要するに台本。台本にまつわるエピソードの数々を、思い思いにお喋りします。「ねぇねぇ、自分のセリフには何色の印をつける?」「あなた、セリフに印つけるの?」「え? つけないの?」といった話から、台本の読み方、初めて手にした戯曲、戯曲を持ち上げる際の筋肉の仕組み(…?)など、女優3人が終演後のビールをぐっと我慢して、ミネラルウォーター片手に「戯曲の読解・私の方法」をご披露します。 |
26日(木) | 出演者トーク(3)「俳優同士の関わり方」 | 藤村忠生+長田典之+神山一郎+奥村洋治 |
「自分」ではない「他者」を「演じる」が、「嘘」をついてはいけない。そんな「本気だけど、私じゃない」人間同士が舞台で「本気のぶつかり合い」をする。私は今、誰と話しているのか? 目の前の人はさっき楽屋でバカ言い合った人じゃないのか? そんな私はいったい誰? 虚々実々の中、普段の生身の付き合いにその混乱は持ち込まれるのか。あいつと私の付き合いは「実」が勝つのか、「虚」が勝つのか? とことん本音をさらす。はず。 |
28日(土) | スペシャル対談「豊島区消滅!?」 | 萩原なつ子(立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科教授)×古城十忍 |
2014年、「日本創世会議」が発表した「消滅可能性都市」に東京23区で唯一指定された豊島区。区長が「奈落に突き落とされた」とショックを隠せない中、「私たちが絶対に豊島区を消滅させません」と立ちあがった女性たちがいた。そして「女性が住みやすい町」を目指して設置されたのが、「としまF1会議」(F1=20~34歳の女性)。その座長を務める萩原なつ子氏をゲストに迎え、「持続発展都市」になるのための作戦の数々、悪戦苦闘の日々を子細にお伺いする。 |
チラシPDF
チケット
発売日
- 一般前売開始
- 2017年9月4日(月)
料金(全席指定・税込)
- 一般(前売)
- 4,500円
- 一般(当日)
- 4,800円
- 学生
- 3,000円
- 初日割
- 4,000円
- *「学生」は当日、会場で学生証の提示が必要です。
- *「初日割」チケットは10月20日(金)の回のみ、前売り・当日ともに4,000円です。
- *受付開始および当日券販売開始は開演の1時間前、開場は30分前です。
- *10歳未満の児童はご入場いただけません。
取り扱い
- ワンツーワークス
- https://www.onetwo-works.jp
- シーボーズ
- tel &fax 03−3635−8686
- チケットぴあ
- 0570-02-9999 (Pコード:480-000)
http://w.pia.jp/t/shometsu/ (PC・携帯共通)
- イープラス
- http://eplus.jp/ath/word/4830
(PC・携帯共通)
- カンフェティ
- 0120-240-540 (平日10:00~18:00)
http://confetti-web.com/shometsu/
お問い合わせ
- ワンツーワークス
- https://www.onetwo-works.jp
〒166-0004 東京都杉並区阿佐谷南1-8-3
佐保会東京会館101
tel:03-5929-9130
fax:03-5929-9131
劇場
〒164-0001
東京都中野区中野3-22-8
※駐車場はございません。車・バイクでのご来場は御遠慮ください。
ロビー電話:03-3382-1560(公演期間中のみ)
事務所電話:03-3381-8422
スタッフ
- 美術:礒田ヒロシ
- 照明:榊 美香/磯野眞也
- 音響:黒澤靖博
- 舞台監督:尾崎 裕
- 演出助手:白井なお/鈴木杏奈
- 衣裳:友好まり子
- 大道具:イトウ舞台工房
- イラスト:古川タク
- デザイン:西 英一
- スチール:富岡甲之
- 票券:川井麻貴
- 協力:CES/演技集団オムニプレゼンス/タクンボックス/アイズ/Gプロダクション/アトリエトモヨシ/シーボーズ/一二の会
- 制作:藤川けい子
- 製作:㈱オフィス ワン・ツー