劇団ワンツーワークス(OneTwo-WORKS)古城十忍の演劇

劇団ワンツーワークス #22
作・演出 古城十忍
2017年6月22日(木)~ 7月2日(日)
赤坂レッドシアター
平成29年度文化芸術振興費補助金
(舞台芸術創造活動活性化事業)

あなたはいったい誰……?
どこから来た……?
病院の霊安室前。
室内には交通事故で死んだ、
ある男女の遺体が安置されている。
知らせを聞いて駆けつけた境田健吾は
霊安室の前で茫然自失……。
死んだ女は境田の姪で、死んだ男は境田と
仕事上の関わりがあったカメラマン。
二人は結婚を目前に控えていた。
ところがその場に、天涯孤独であったはずの
死んだ男の姉だと名乗る女が現れ、
霊安室での「あること」をきっかけに、
死んだカメラマンの「素性」は大きく
揺らぎ始める……。
そして、その不可解さを助長するかのように、霊安室のドアの下から
「水」が染み出してくる。
しかしその水は、
境田にも男の姉だと名乗る女にも、
誰にも認知されない……。

赤坂レッドシアターで、
約1トンもの本水を使用。
舞台上に満ちていく「水」が意味するものは
果たして何なのか──?
「私が私であることの証明とは何か」という
問いをスリリングに、
サスペンスフルに描く衝撃の問題作、
17年ぶりに登場。

上演に寄せて

「あなたは何者ですか?」にどう答えるのか。 古城十忍(作・演出)

「あなたは何者ですか?」
そう問われて、私は最初に何を答えるだろうと考えた。「古城十忍と申します」。まずは名前だろうか。「劇作家・演出家で、劇団を主宰しています」。続いて、職業か? あとは何だ、年齢? 出身校? ……なんとも味気ない返答しか浮かばないが、やはり何かしらの「属性」を答えることが自分を知ってもらうことになるのだろうか。
もちろん、そこはどういう場で、誰に問われたのか、状況次第で返答は変わるだろうが、これが外国にいた場合、「日本から来ました」と、かなりの高順位で「国名」を口にすることが多い。
だが、国名を挙げるのはなぜなのか。
日本人だと知ってもらいたいから? パッと見で白人でも黒人でもない、アジア系の人間だとわかるだろうに、実際、「Where are you from?」とよく聞かれはしてきたが、尋ねる人は何を知りたくて質問するのだろう。「ああ、日本なら私も一度行ったことがあります」と、共通の話題を探りたいだけなのかもしれないが、改めて考えると少し不思議な思いに駆られる。
もし尋ねられたのが私ではなく、「もともとはシリアからの難民で、アメリカに住むアメリカ人と日本人の夫婦の養子になった」という経歴を持つ人であったなら、その人は何と答えるのだろう。
西加奈子さんの小説『i アイ』の主人公がこの設定になっていて興味深く読んだが、実際にそんな人がいたとして(今のご時世、いても何ら不思議はない)、その人は延々と出自を述べるのだろうか。また、その答えを得て、尋ねたほうはその人をどれほどわかったと思うのだろう。

私は、自分の祖父のことも祖母のこともよく知らない。その昔、実家には紋付きを着て気むずかしい顔をした老人の写真がいくつか飾ってあったが、生きて会ったことはないので、いつも何の感慨もなく他人を見るように眺めていた。
今のところ私は、日本人なのだとは思う。祖父母のもっと前の先祖のことはまったくもって知らないし調べたこともないが、今まで誰からも「おまえは日本人ではない」と宣告されたり、証拠を突きつけられたりしたことはないので、たぶんそうなのだろう。加えて、役所で私の戸籍謄本は取れるので日本国籍には違いないのだが、国籍が日本であれば、イコール人種としての日本人と言えるのだろうか、という疑問は残る。
こうして突き詰めていくと、私はただ自分で自分を日本人だと思っているにすぎないのではないかと、その道筋は何とも頼りないものに思えてくる。と同時に、「何者であるか?」という答えに、出自(人種)はそんなに重要な要素なのか、どうでもいいことじゃないか、と反発心がむくむくと立ちあがってくるのだが、この世にはヘイト・スピーチなるものに並々ならぬ情熱を注ぐ理解不能な連中もいるので、世界に国というくくりがある限り、出自をめぐっての揉め事は残念ながらそうそう簡単になくなりそうにない。

前回公演『怒りの旅団─アングリー・ブリゲード─』の作中で、無政府主義の革命家が確信に満ちて言う、こんな台詞があった。
「将来、国同士の戦争はなくなるよ。なぜなら国という概念がなくなって、企業と消費者だけになるから」
そうなったほうが全然マシかも、と今はかなり本気で思う。それだけ今、世界的に「自国第一主義」がはびこって、私はなんとも薄気味悪い。
何かと言えば女性知事が口にする「都民ファースト」にも、数に物を言わせた現政権の言わば「政権第一主義」にも似たような薄気味悪さを覚えるし、「アメリカ・ファースト」をお題目に奇策を繰り出す大統領の「自国第一主義」は、本当は国を守りたいのではなく、人種(白人)を守りたいのではないかと勘ぐりたくなる。
当たり前だが、「自国第一主義」と「愛国心」は違う。まったくの別物だ。愛国心は他国と自国を比べるものではないが、自国第一主義は区別、ひいては差別の温床になりかねない。
本作『アジアン・エイリアン』の初演は1998年、再演は2000年。それから17年の時が過ぎ、あの頃に感じていた違和感を私は今また、もっと不気味な違和感として抱えている。 だからこそ長年の時を経て、今一度この作品に向き合わねば、と私は思ったのだと思う。

本日はご来場ありがとうございます。ワンツーワークスがお届けする渾身の舞台、存分にお楽しみいただけますよう、と切に願います。
2017年6月

観劇に寄せられた声

アンケートに書いていただいた感想・メッセージより (○=女性 ●=男性)

【10代】
  • ○ 水を使った演出が新鮮で良かったです。水面のうつりこみや照明が綺麗だったし、流れ方やしぶきに登場人物の感情を感じることができて、とても面白かったです。(学生)
  • ● 「公と私」を掴み、舞台上できれいに、でも程よく生のまま提示する。そのバランスがよかったです。動きがすごい……。(学生)
【20代】
  • ○ 日本と韓国のハーフです。痛いほどわかるし、死ぬほど遠い。在日の方や純日本人の方、ほかの外国の方と接するときの中途半端な疎外感。すごくよくわかって、でもきっとそういう思いは国を隔てて誰しもが抱えているのかもしれませんね。─(中略)─わかりあうのはきっと無理なんだと思います。でも水をすくいあげることは無駄じゃないんだろうなと。(職業記載なし)
  • ○ 「見る」「見える」「見えない」「見ていない」「見ようとしている」「見ている」。私はどれだろう。見えていないのかもしれない。バックステージツアー、本当に舞台裏まで見せていただきとても面白かったです。(団体職員)
  • ● 水……いろいろと思うことはありますが、もっとストレートに届いたら好みでした。国柄だけじゃなく、最近はいろいろな人が生活しているのがオープンになってきています。そういった側面を持っている人たちにも見てほしいと思いました。(アルバイト)
【30代】
  • ○ 「不可視の水」がヒタヒタと流れ始める瞬間、怖い……と思いました。得体の知れない感じがものすごくしたからです。私は得体の知れないものを怖いと感じるんだということ、それは差別なのでしょうか……。ワンツーワークスという劇団を知ることができて、私の人生は広がった気がします。これからも応援していきたいです。(パート)
  • ● なかなかナイーブなテーマを扱っていて、頭を使いながら観ました。改めて考えるきっかけになります。水はモノを溶かす、ということに改めて気づきました。(会社員)
【40代】
  • ○ ちょっとホラーなのかな?と思わせるような始まりから、お話が進むにつれ、次第に見えてきたのは極めて現実的な実態でした。私は常々、生き物の中で人間ほど裏の顔を持ち、そして人間ほどその裏の顔が真実である生き物はいないと思っていて。それを何と表していいのかモヤモヤしていましたが……「エイリアン」、その言葉にしっくりきました。(専門職)
  • ● 私は韓国人と仕事で一緒になることがあり、感情的で混乱することがあります。面と向かうと変わらない東アジア人、でも国対国の民族の違いを感じ、政治だと溝を感じます。今日この作品を観て、たくさんの隙間のところどころが埋まった気分になりました。(会社員)
  • ● 期待以上でした。もの珍しさで水を使いたがるところはいくつか見たことがありますが、ここまで水が重要という見せ方は素晴らしいです。壁や天井に映る天然の水の照明がとてもきれいでした。(会社員)
【50代】
  • ○ 解答はない。今まで気づかずに、見ずにいたかもしれないことを、見なくてはならない、と思った。(主婦・女性)
  • ○ 心の中を見透かされたようで、ちょっと怖いような気分になりました。水が持つイメージが広がった。水が形を変える、色、心も映す……こんなにも。(専門職)
  • ● 魂にダイレクトに響いてくる内容でした。水は魂の例えの一つでもあります。水を使うことにより効果大であったと思います。(専門職)
【60代】
  • ○ オープニング、すごく面白かったです。芝居でなくてはできない表現ですよね。─(中略)─根っこにあるものを忘れがちだったと気づきました。(定年退職)
  • ● 観るのは初演から今回で3回目でしたが、初演当時と社会状況が大きく変化してきていることを痛感します。ヒエラルキーの不思議を感じました。(会社員)

出演

山田悠介
山田悠介
ワタナベ・アクトゥール
山中雄輔
山中雄輔
劇団スパイスガーデン
原田佳世子
原田佳世子
吉澤萌々茄
吉澤萌々茄
石川亞子
石川亞子
松尾敢太郎
松尾敢太郎
田村往子
田村往子

日程

  6/22 23 24 25 26 27 28 29 30 7/1 2
14:00     3★ 4★     7     11 13
19:00 1 2★     5★ 6★ 8 9★ 10★ 12  

★…アフターイベントあり

6月23日(金) 公開ダメ出し「猛省しなさい」 出演者の誰か×古城十忍
6月24日(土) バックステージ・ツアー
「水を使う」
案内人:
礒田ヒロシ(舞台美術家)+奥村洋治
6月25日(日) 出演者トーク(1)「役との距離」 多田直人+山田悠介+奧村洋治
6月27日(火) 出演者トーク(2)「演じる楽しさ」 池永英介+山中雄輔+関谷美香子
6月29日(木) 特別講座「ムーヴメントの極意」 奧村洋治+関谷美香子+古城十忍
6月30日(金) スペシャル対談
「ちょっと危ない話」
鐘下辰男(劇作家・演出家、桜美林大学芸術文化学群准教授)×古城十忍

※追加アフターイベントが決定!

6月26日(月) トークセッション
「俺っていったい誰……?」
多田直人+山田悠介+池永英介+山中雄輔
進行:田窪桜子(演劇ジャーナリスト)

チラシ画像

チケット

発売日

一般前売開始
2017年5月8日(月)

料金(全席指定・税込)

一般(前売)
4,500円
一般(当日)
4,800円
学生
3,000円
  • *「学生」チケットは当日、学生証提示が必要です。
  • *受付開始および当日券販売開始は開演の1時間前、開場は30分前です。
  • *10歳未満の児童はご入場いただけません。

取り扱い

シーボーズ
tel &fax 03−3635−8686
イープラス
http://eplus.jp/ath/word/4830
(PC・携帯共通)
チケットぴあ
0570-02-9999 (Pコード:457-447)
http://w.pia.jp/t/asian/ (PC・携帯共通)
カンフェティ
0120-240-540
http://confetti-web.com/asian
ワンツーワークス
メール : 22ticket@onetwo-works.jp

お問い合わせ

ワンツーワークス
〒166-0004 東京都杉並区阿佐谷南1-8-3
佐保会東京会館101
tel:03-5929-9130  
fax:03-5929-9131

劇場

赤坂レッドシアター

東京メトロ丸の内線・銀座線
【赤坂見附駅】(10番出口)より徒歩2分
東京メトロ千代田線
【赤坂駅】(2番出口)より徒歩6分

〒107-0052
東京都港区赤坂3-10-9
赤坂グランベルホテルB2F

※劇場入口はホテル入口と異なります。
お越しの際はご注意ください。

TEL:03-5575-3474
ロビー直通:03-5575-7132(公演期間のみ)

スタッフ

  • 美術:礒田ヒロシ
  • 照明:磯野眞也
  • 音響:黒澤靖博
  • 舞台監督:尾崎 裕
  • 演出助手:白井なお
  • 衣裳:友好まり子
  • 大道具:イトウ舞台工房
  • イラスト:古川タク
  • デザイン:西 英一
  • スチール:富岡甲之
  • 宣伝ヘアメイク:武井優子
  • 舞台写真:中川忠満
  • 票券:川井麻貴
  • 宣伝映像:松澤延拓
  • 協力:アイズ/アトリエトモヨシ/アレ/演劇集団キャラメルボックス/劇団スパイスガーデン/シーボーズ/Gプロダクション/タクンボックス/ネヴァーランド・アーツ/ワタナベ・アクトゥール(以上50音順) /一二の会
  • 制作:藤川けい子
  • 製作:オフィス ワン・ツー

アフターイベント・レポート

人気のアフターイベントの概要を簡潔にお届けします (敬称略)

6月23日(金) 公開ダメ出し 「猛省しなさい」 出演者の誰か×古城十忍

舞台上で演出家・古城十忍からの「ガチダメ出し」を受けるという、役者にとっては恐怖のイベント。なぜかいつも、お客様には大好評。今回は舞台上が水浸しの状態で芝居が終わるため、俳優たちは水はけ作業をしながらダメを聞くという、摩訶不思議な光景の中で展開。

開始早々、初参加の客演陣から「これ、マジのダメ出しじゃないっすか!!」「もっと楽しいショー的な感じかと思ったのに」と抗議が飛ぶ。すかさず「ちょっと黙っててくれます?」と一蹴する演出家。一笑するお客様。イケメン客演陣に演出家が、「君らイケメンなんだから、格好いい台詞を格好よく言わないでよ。そろそろ格好悪いことは格好いいことなんだってことを覚えてください」と説く場面では、客席から拍手が巻き起こる。

こうして何度も笑いに包まれる中、辛辣なダメも細かいダメも延々と続いていくが、約30分の持ち時間はあっという間に過ぎ、台本の半分くらいしかダメを出せずに今回も時間切れとなった。

6月24日(土) バックステージ・ツアー 「水を使う」 案内人:礒田ヒロシ+奧村洋治

まず、舞台美術家・礒田ヒロシが自ら、今回の美術コンセプトについて説明を行った。舞台上はどのように防水加工がなされているのか実際に使用した防水シートなどを見せ、ひたひたと忍び寄る水、大量に一気に出てくる水、その両方の仕組みも解説。また、劇場で仕込んでみて発生したトラブルやその改善点など、裏話なども話してもらったところで、いよいよツアー開始。

今回もたくさんのお客様が参加してくださったため、ツアーは4グループに分けてスタート。見学ルートの要所要所には俳優たちも立って見守る中、舞台裏の小道具置き場を抜け、水の溜まったプール状の縁(へり)の部分を通って舞台奥の扉、下手の扉へ。袖中では開演前に水を貯めておくタンク、水が出てくる仕掛け、ポンプで排水作業している様子なども見てもらった。

案内人の奥村洋治の飄々とした人柄が滲む進行で、笑い声や感嘆の声が絶えなかった約30分のツアーは大盛況のうちに終了。

6月25日(日) 出演者トーク(1) 「役との距離」 多田直人×山田悠介×奧村洋治

共演は初めてという初顔合わせの3人の男優が、本作における自分の役の捉え方について、それぞれの考え方を語った。

ともに在日を演じた、山田悠介は「今回、私生活を役として顧みることに挑戦していた」、多田直人は「お客さんが誰に感情移入すると心電図が振れるように感じるのかを考えていた」などと語った。

初演・再演・今回といずれも主人公を演じた奥村洋治は、「再演から17年経ち、今の自分の年齢で感じる感情で演じていいのかを考えた」と、役の年齢との距離について悩んだと打ち明けた。

また、このところ多田直人はミステリアスな役、山田悠介は明るい役が多かったそうだが、今回、演出の古城十忍から、「どうせならやったことのない役に挑戦してみないか?」との話があり、2人とも新しい一面を見せるべく、「挑戦しがいのある役をいただいたと思う」と話した。

6月27日(火) 出演者トーク(2) 「演じる楽しさ」 池永英介×山中雄輔×関谷美香子

ワンツーワークス初参加の感想について、「自分の演劇の原体験を揺さぶられたような、根っこの部分をガンガンガンガン攻撃された約1カ月の稽古だった」(池永英介)、「自分の役が最初は全然わからなかったけど、自分の中の差別意識とか、そういうことが突き詰めて考えられた」(山中雄輔)、と二人が語ったあと、話題は「演じる楽しさとは?」という核心部分へ。

池永英介の「たぶん、他者になるってことが楽しさなんだと思う。絶対的に自分ではない存在になって、その人生なりを本番中も味わってるし、苦しんでるし」という話に、聞いていた二人は「おお…!」と感心することしきり。山中雄輔は「古城さんもよく言ってたじゃないですか。『このセリフの裏の気持ちが見たい』と。セリフじゃないところの裏の部分を考える時間がすごく多かったような気がしますね。ザワザワしてた、ずっと」と役づくりの苦労をここでも吐露。

最後に関谷美香子が、「お客さんの入った劇場で、稽古場とは違う、客席からもらえる空気感も一緒に、この劇場の中で感じること、それが楽しさ」と言うと、「やっぱり舞台って楽しいよね」と3人そろって力強くうなずき合っていた。

6月29日(木) 特別講座 「ムーヴメントの極意」 奧村洋治×関谷美香子×古城十忍

大量に水が残ったままの、まるでプールのような舞台に、3人ともが裸足で登場。

まず、作品に「ムーブメント」を取り入れるようになった経緯について古城十忍が「言葉のない身体表現で場面をつくりたかった」とその効用を説明。その後、普段の稽古で劇団員が行っているスローモーションでの歩行や、クイックモーション・ストップモーションなどを駆使した身体を動かし方の基礎訓練を奥村洋治、関谷美香子が実演してみせ、古城十忍による解説が行われた。

後半では、これまで上演された作品の中から、『誰も見たことのない場所』(2007年初演)、『パラサイトパラダイス』(2003年初演)、『蝿の王』(2011年初演)で行ったムーブメントを実際に音楽を流して披露。奥村洋治のキレのある力強い動き、関谷美香子のしなやかで繊細な動きに、客席からは自然と拍手が起こっていた。ムーブメントの講座は初の試みだったが、演劇創作の一端が垣間見える約30分となった。

6月30日(金) スペシャル対談 「ちょっと危ない話」 鐘下辰男×古城十忍

対談はいきなり、「見えない差別」という本作の核心となる話に及んだ。劇作家・演出家の鐘下辰男はその昔、故郷・北海道で通学バスで見かけていたアイヌ民族の女子高校生に対しての、当時の自分の複雑な感情を思い出したと訥々と語った。

また、「なんでもあり」だった小劇場全盛時代に青春を過ごした演劇人同士らしく、水を使った本公演の話から、やがて「今の劇場はまず規制ありき」という現状を二人して嘆くことしきり。ロンドンの演劇事情を引き合いに、「まず、やりたい表現があって、その上で安全を考えるべき」という古城十忍の発言には鐘下辰男も「そう、そうなんだよ」と激しく同意していた。

同世代の二人の対談は話題が尽きることがなく、予定時間を遥かにオーバーして盛り上がった。