劇団ワンツーワークス #29
『死に顔ピース』
[作・演出]古城十忍
2019年10月24日(木)~ 11月3日(日)
中野ザ・ポケット
令和元年度(第74回)文化庁芸術祭参加公演
文化庁文化芸術振興費補助金
(舞台芸術創造活動活性化事業)
独立行政法人日本芸術文化振興会
予告編
お触れ
書き
お触れ
書き
「ああ、すっげえ面白かったあ」
と言って私は旅立ちたい。
上演を重ねるたびに私は、
この思いがどんどん強くなっている。
さて、唐突ですが次の問いに答えてください。
【Q1】あなたは、どこで死にたいですか?
【Q2】延命治療を望みますか?
【Q3】臨終に際して誰に看取ってほしいですか?
【Q4】死後、やってほしいことがありますか?
人間とはよくしたもので、若かりし頃は想像だにしなかった「自分の死」について、歳を取るごとに少しずつ現実味を帯びて考えるようになります。
まあ、当たり前の話ですが、歳を取れば取るほど体のあちこちの部位に不具合が生じてくるので、「俺の心臓、もうずいぶん使ってるけど、あと何年もつんだろう?」と思ったりするわけでして……。そうして少しずつ少しずつ自分の体のことや自分が死ぬことを考えるようになっていれば、いざ「その時」が来ても、じたばたしないですむ。そういうプログラムがあらかじめ人の脳にはセットされているのかもしれません。「あんた、もう十分考えたでしょう?」ってことで。
そう考えるとやはり、シミュレーションは大事です。大事ですが、真剣に考えれば考えるほど、より具体的にイメージすればするほど気持ちは相当に滅入ってくるので、なんとなく頭の片隅で「こそこそっ、と考える」、それが関の山なんですね、私の場合。
でも今日は、大事大事と自分に言い聞かせて、こそこそっとよりはもう少し向き合って考えてみます。
そんなわけで冒頭の質問。
質問自体がかなり恣意的ではありますが、とりあえず私、答えます。
【Q1】あなたは、どこで死にたいですか?
【A1】 自宅。自分が生活してきた物たちに囲まれて逝くのが一番心安まるような気がする。肺癌で入退院を繰り返していた私の父が、入院すると途端に駄々っ子のように「家に帰せ」と言い続け、束の間、家に帰ると飽きもせず、いつも座っていた居間から庭先を何時間も見ていたことを鮮明に覚えてる。あれはたぶん、思い出に囲まれていたんだろうな、と。
【Q2】延命治療を望みますか?
【A2】 まったく望まない。ただ生かされいる状態で生き続ける意味がわからない。だから今後、医学がめざましく発達して、苦痛ゼロ、目覚めてるときは意識もはっきり、そういう状態でいられるならば延命を考えなくはない。ベッドから離れられなくても好きな映画やドラマを存分に観られるのであれば。
【Q3】臨終に際して誰に看取ってほしいですか?
【A3】 誰にも看取られたくない。なんか恥ずかしい。もちろん息も絶え絶えでそんなこと思ってられないのかもしれないし、人はいつまで周りの人の言葉が聞こえるのか自分の体で試してみたい気もするけど、みんなには「聞いた? 死んだんだって」と、風の噂のように私の死を認識してもらいたい。
【Q4】死後、やってほしいことがありますか?
【A4】 誰かに私が所有するすべてのパソコンのハードディスクを破壊してもらいたい。これはものすごく気になる。理由はもちろん、見られたくないものが膨大に残されているから。例えば、書きかけの小説とかエロ動画とか、日記もどきのようなものとかエロ動画とか、とにかく黙って粛々と処分してほしい。
2005年に芥川賞を受賞した絲山秋子さんの小説『沖で待つ』がそんな話で、主人公の女性「及川」は会社同期の恰幅のいい男性「太っちゃん」と恋愛感情はないものの働く仲間として意気投合し、「どちらかが死んだら、お互いのハードディスクを壊して人に知られたくない秘密を守る」という約束をする。そのため二人は互いの家の合い鍵も持っているのだが、その太っちゃんが事故で突然死んでしまう。約束を果たすべく、及川は家に忍び込んでハードディスクを破壊するのだけど、この場面のなんとも言い難い、たまらなく切なくてやるせなくなった感情は今も忘れがたい。そして太ちゃんのハードディスクが壊されたその瞬間、ああ、太っちゃん死んだんだ、と私は思わず泣いていたように思う。
なので私もそうしてほしい。私という「本体」がこの世を去った以上、私の「分身」とも言うべきパソコンもしっかり壊して亡きものにしてもらいたい。この件だけは誰かに真剣に、今からお願いしておかなければ。
というわけで、『死に顔ピース』。2011年初演、16年再演に続いて、再々演です。
超高齢化社会を突き進む今の社会で、国が医療費削減のために「在宅死」を推奨するようになった時代にあって、いやいやそんなことより……。万人に間違いなく訪れる命の終わり。その時を自分はどんなふうに迎えたいのか。自分の大切な人をどんなふうに旅立たせてあげたいのか。この芝居を観ながら、頭の隅でこそこそっと考えてみるのも決して損ではないと思います。私も日々考えながら、稽古に励みます。
2019年7月20日 古城十忍
上演に
寄せて
寄せて
そう願えば、「自宅で死ぬこと」は
簡単なのか。
[脚本・演出]古城十忍
さて、自分は「どのように死んでいくのか」。私の場合、その答えはほぼ出ている。長年フル稼働してきた体にやがてガタがきて癌になり、長い坂を、あるいは急な短い坂を下るようにして死んでいく。癌家系なので仕方ない。十中八九そうなるだろうと腹をくくっている。
では、自分は「どこで死ぬのか」。内閣府の意識調査(2012年)によると、「最期を迎えたい場所」の第1位は「自宅」で55%と過半数を超える。以下、「病院」28%、「子ども・親族の家」5%と続き、「わからない」という人も7%いるが、私は多数の人と同じく、自宅で死にたい。
だが、この希望が叶う可能性は極めて低い。厚生労働省による「実際の死亡場所」の調査では、1951年の「自宅死」は82.5%もあったのに、その後の約50年間で急降下、05年には僅か12.2%までに激減。一方、同期間で「病院死」は11.7%から82.4%に急増。このままでは医療費に係る国家予算が膨れあがり、財政破綻を招くのは確実とやっと気がついたのか、厚生労働省は12年になって「在宅医療の普及・啓発」へと舵を切った。さて、その成果やいかに。
それから4年後の16年の調査ではあるが、「病院死」は75.8%に、つまりピーク時から6.6%減少した。さすが、国が乗り出すと違う。このままいけば再び「自宅死」が増えるだろうと思いきや、16年の「自宅死」は13.0%。05年からたったの0.8%しか増えていない。ぬぬ? 計算が合わぬ。と思ったら、別のところが増えていた。
それは「高齢者施設」。05年に2.8%だった「施設死」は16年には9.2%にまで上昇。つまり「病院死」で減った6.6%は自宅には流れず、ほぼ高齢者施設に流れた。要するに今なお、「自宅では、なかなか死ねない」。これが現実だ。
それでも私は自宅で死ぬと駄々をこねても、現実は厳しい。激しい痛みはいったい誰が取り除いてくれるのか。ケアをして看取ってくれる人や環境がなければ、死に場所は選べない。この現実を嘆き、国の無策をなじるのは簡単だが、果たしてそうか? 戦後、死を遠ざけ、死を隠してきた、また利便性を追い求めて病院任せにしてきたのは誰だったのか。つまりは、ツケが回ってきた。そういうことだ。そう腹をくくるしかない。
さて、あなたは「どこで死にたいですか?」 2019年10月12日 古城十忍
公演日程
10月25日(金) 18:30の回 |
公開ダメだし 「ガチでやります」 |
出演者の誰か(たぶん複数)×古城十忍 | |
観客の皆さんの前で今終わったばかりの舞台について演出家がガチで「ダメ出し」をします。もちろん、大きなダメも細かい揚げ足取りダメも包み隠さず。いったい演出家は何にこだわり、俳優は何を考えて本番に臨んでいるのか。表現者としての素顔がさらけ出されるこの企画。ガチでやればやるほど、客席は毎回、爆笑の連続。必見です。 ▼ 詳細を開く▲ 閉じる
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10月26日(土) 18:30の回 |
スペシャル対談「在宅死を考える」 |
岡原仁志(医師)×古城十忍 | |
岡原さんは、「愛とユーモアの医療」を信条とする「おげんきクリニック」(山口県大島郡周防大島)の院長で、いわゆる末期癌患者さんの在宅医療のスペシャリスト。そして『死に顔ピース』のモデルとなった医師です。 ▼ 詳細を開く▲ 閉じる
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10月27日(日) 14:00の回 |
バックステージツアー「舞台の仕掛け」 |
案内人:奥村洋治+小山広寿 ほか劇団メンバー | |
「ウェルカム・トゥ・ザ・バックステージ・ツアー!」 おなじみ奥村・小山コンビでお送りするアフターイベント。ついさっき観て感動した(はずの)舞台に実際に立ってみて、「あ、あの仕掛けはこうなってるんだ」「あ、あの奥行があるように見えてた奥はこんなんだったんだ」「ああ本番中、舞台上から客席はこんなふうに見えてるんだ」など、なかなか味わえない舞台役者の気分をタップリ味わっていただきます。ネタバレすれすれの奥村の危険トークもスリル満点! ▼ 詳細を開く▲ 閉じる
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10月28日(月) 18:30の回 |
出演者トーク(A)「私の理想の死に方」 |
藤村忠生×神山一郎×山下夕佳×奥村洋治 | |
「生き方」に必死の毎日なのに、「死に方なんて考えたこともないわいっ!」と、きっとそれぞれがわめきたて、収拾がつかなくなる予感を抱えつつ、予測のつかない「その時」について語り合う。10年先なのか、20年先なのか、はたまた明日なのか。赤裸々に語られる4人の死生観。どうでもいい人にはどうでもいい、理想の死に方論バトル! 聞いてるうちにあなたも「死ぬ時」に見るはずの叶わぬ夢を見るかも。 ▼ 詳細を開く▲ 閉じる
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10月29日(火) 18:30の回 |
出演者トーク(B)「『死に顔ピース』ができるまで」 |
みとべ千希己×小熊 綸×関谷美香子 | |
今回で再々演となる『死に顔ピース』。初演の企画から関わっているみとべ千希己さん、今作に初参加の小熊綸さんと関谷美香子が、幕が上がるまでのあれやこれやを振り返ります。どんな思いで作品に臨むのか、それはどう変化したのか。ムーヴメントや舞台転換はどんなふうにできあがっていったのか。裏話もたっぷり交えて、芝居づくりの楽しさを存分にお届けしたいと思います。乞うご期待! ▼ 詳細を開く▲ 閉じる
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10月31日(木) 18:30の回 |
出演者トーク(C)「笑いと医療」 |
YAMA×小林桃子×上脇結友×奥村洋治 | |
笑顔が素敵な4人(例外もいる?)が、医療と笑いの関係を探る。終末期医療の病床での「笑い」は不謹慎という見方がある一方で、「笑い」には患者本人にも家族にも苦痛を軽減する効果が期待できるという例もある。『死に顔ピース』の登場人物としての立場から、それぞれどのような思いで「医療」と「笑い」を演じていたか、演じているかを語り合います。話が「笑い」にだけ傾いたらすみません。 ▼ 詳細を開く▲ 閉じる
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11月1日(金) 18:30の回 |
スペシャル対談「在宅死の功罪」 |
長尾和宏(医師)×古城十忍 | |
長尾さんは外来診療から在宅医療まで「人を診る」総合診療を目指す「長尾クリニック」(兵庫県尼崎市)の院長。豊富な臨床経験から著書も多く、『平穏死・10の条件』『痛くない死に方』などはいずれもベストセラー。2017年刊行の『痛い在宅医』も発売即重版、決して美談だけではない在宅医療の光と影を赤裸々に綴っている。 ▼ 詳細を開く▲ 閉じる
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チケット
発売日
- 一般前売り開始
- 2019年8月24日(土)
料金(全席指定・税込み)
- 一般(前売)
- 4,800円
- 一般(当日)
- 5,000円
- 学生
- 3,000円
- 高校生以下
- 2,000円
- 初日割(10月24日のみ)
- 4,000円
- ハッピーステージ
(10月30日夜のみ) - 4,000円
- *「初日割」チケットは前売りのみの扱い
「ハッピーステージ」チケットは前売り・当日ともに同じ金額です。 - *「学生」「高校生以下」はシーボーズでの取り扱いのみ。
当日、会場で学生証の提示が必要です。 - *受付開始および当日券販売開始は開演の1時間前、開場は30分前です。
- *10歳未満の児童はご入場いただけません。
取り扱い
- シーボーズ
- Tel&Fax:03-3635-8686/
mail:29onetwoworks@seabose.co.jp
- チケットぴあ
- 0570-02-9999 (Pコード:496-435)
http://w.pia.jp/t/onetwo-works/
- Confetti(カンフェティ)
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WEB予約 http://confetti-web.com/onetwo-w29/
電話予約 0120-240-540(平日10:00~18:00)
劇場
中野駅南口より徒歩5分。
〒164-0001
東京都中野区中野3-22-8
※駐車場はございません。車・バイクでのご来場は御遠慮ください。
ロビー電話:03-3382-1560(公演期間中のみ)
事務所電話:03-3381-8422
スタッフ
- [美術]礒田ヒロシ
- [照明]磯野眞也
- [音響]黒澤靖博
- [衣裳]友好まり子
- [舞台監督]尾崎 裕
- [舞監助手]小山広寿
- [衣裳助手]増田 和
- [演出助手]田邉かおり
- [大道具]イトウ舞台工房
- [イラスト]古川タク
- [デザイン]西 英一
- [スチール]富岡甲之
- [舞台写真]黒木朋子
- [受付]豊田恵子/舩木文美/小島敦子
- [票券]川井麻貴 シーボーズ
- [webサイト]吉田淳一
- [特別協力]岡原仁志(おげんきクリニック院長)
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- [協力]
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アイズ/アトリエトモヨシ/演技集団オムニプレゼンス/演劇集団キャラメルボックス/okiaproduct/キャンパスシネマ/QUEENS’ LEAGUE/Gプロダクション/スタッフ・ワン/タクンボックス/ (*以上50音順)
一二の会(ワンツーエンジェル)
瀬川 朋、安藤聡一郎、武井髙之、小笠原由季恵、伊勢崎 健、大塚順一、高宮香枝、田嶋尚美、大谷雄昭、ふらんそわず、まき、ムラサキ、チャコリン そのほか匿名の皆様
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- [助成]
- 文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術創造活動活性化事業) 独立行政法人日本芸術文化振興会
- [制作]藤川けい子
- [製作]オフィス ワン・ツー
令和元年度(第74回)文化庁芸術祭参加公演