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若背広男 じゃああ、掛橋さんは何かできるんすか?どうでもよくないこと、どうにかできるんすか?
前掛け女 できるかもしれないじゃない。
若背広男 医者じゃないんすよ、俺たちは。
前掛け女 だからって下手な芝居して指くわえて見てるだけ?あたしたちがしてやれることはほかにいくらでも……
若背広男 人が人に、何かしてやれるだなんて傲慢ですよ。
前掛け女 ……傲慢?




女の声 だから女の子の名前よ。勝手に決めないでよ。ちゃぁんといろいろ考えて……え、やぁよ、そんなの。ちゃんと考えてよ。
薮内 ………。(声につられるかのように、ゆっくりと立ちあがる)
女の声 そうねぇ……。あなたも一緒に考えてよ、女の子の名前……。
 

それから、ばらばらに飛散した箱の一つを手に取り、ぼんやり眺めて別の箱に重ねてみる……。




背広男 (小型のテープレコーダーも出して)ちっちゃいのとでっかいのと二つ置いてくから、こつちとあっちで録音してくんないかな。
前掛け女 何をですか?
背広男 ヤプさんの声だよ。このままず〜っと黙りっぱなしってことはないっしょ?
前掛け女 録音してどうするんですか?
背広男 自分の声を聞かせたら何か思い出すかもしれない。ヤブさんの中で何かが見えてくるかもしれない。
前掛け女 ………。



背広男 もうちょいであがりますかららヤブさん、そっちで待っててください。

薮内

もうギリギリだぞ。間に合うのか?
背広男 ほんと、もうちょいすから。(バッグから原稿用紙と鉛筆を出してペンを走らせる音を出しながら)
え〜っと、現代社会の、現代社会の根深い一面を図らずも、図らずも……
薮内 まだか?夕刊、間に合わないぞ。




背広男 俺、佐和子さんと結婚したいんすよ。
薮内 佐和子……?
背広男

ヤブさん、俺がヤブさんの娘さんをもらっちゃダメっすか?

薮内 娘……?



若背広男 何やってるんすか?
紙袋女 この人は強い人なんです。強かったんです。
背広男 いいから離せ!
  背広男、紙袋女の手を強引に離す。激しさのあまり、紙袋女・前掛け女・背広男は転倒……。


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