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伊達
月野
白く、こざっぱりとした、またしても待合室。
待っている女が二人。
その女たち・AとB、Aは本を読んでいて、Bは足を組んだまま一点をじっと見詰めている。
女A、落着かない。
広げた本に目を落とす。何度も不安げに立ち上がる。なんとなく威圧感のある、涼しげなBの存在……。待合室の隣から争う声が聞こえて、恐る恐る覗きにいく……。
- 増岡
- 受け付けの子にもちゃんと注意しておきます。
- 伊達
- あなた、誠意がないなぁ。
- 増岡
- 誠意…?
- 伊達
- 誠意を持って接する。人付き合いにおけるこのポイントって高いんですよ。
- 女B
- 精子、売りに来たんでしょ?
- 伊達
- え?
- 女B
- 話し、聞こえてたから。
- 伊達
- 申し訳ない。女性の前で失礼、ですよね。
- 女B
- あんたみたいなタイプが精子、売るんだ。
- 伊達
- ドナーとして登録されるかどうかはまだ。初めてですから。
- 女B
- あ、そうなの。
- 月野
- こんにちは。
- 藤枝
- あなた……。
- 月野
- (増岡に)偉いのね、あなたの同僚。下痢なのに休日出勤?
- 藤枝
- 下痢?
- 増岡
- 何でもないよ。
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