ポップな音楽を合図に、きらびやかな照明が入る。 白く、がらんとした一室。 スタジオである。 ファッション雑誌から抜け出したような若い男たちが数人、とびきりの笑顔でポーズを決めている。 若い男の一人がモデルのように軽やかに動き始めると、ナレーションが入って−。 |
藤枝 | …煙、だめなんですか? | |
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芳野 | いらいらすんだよ。悠長な態度でいられると。 | |
藤枝 | ここは禁煙じゃありません。 | |
突然、女がひとり、怒涛のように現れて−。 藤枝と芳野の目もはばからず、その女・C、部屋の隅にうずくまって激しく鳴咽しはじめる…。 |
湧水 | …ごめんなさい。 | |
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増岡 | いいんです。 | |
湧水 | ブレーキが利かなくなっちゃって、私…(再び動揺がちらつく) | |
増岡 | …赤ちゃん、欲しいですよね? | |
湧水 | ………。(小刻みにうなずく) | |
増岡 | 奥さんに妊娠反応があったの事実なんですから。次はもうできますよ。 | |
増岡 | 芳野芳子って…ああ、あの人は幸せだよ。 | |
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芳野 | 幸せ?幸せって何で? | |
増岡 | 体外受精、一回で成功したんですよ。 | |
芳野 | やっぱり成功してたんだ……。 | |