声 | 忘れていつしか、水平線を踏み越えて、僕はあいつに、あいつは僕に、暴力をふるい続けた。僕らは遙か、水平線で結ばれていた。 | ||
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海の人影、明確な輪郭を形作るまもなく、みるみる大きくなって、たちまち海も空も覆い尽くす。 もう声も聞こえない……。 |
坂巻 | [お取り込み中?] | |
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空知 | え? | |
坂巻 | [いやだからほら、プライベートでさ。] | |
空知 | 誰もいませんけど。独りですよ。 | |
坂巻 | [あ、そう? 独り? 暇なんだ。] | |
女 | ………。 | |
空知 | どうしたんですか? | |
坂巻 | [いやいやいやいや、いろいろ考えるとこあってね、大層なことじゃないんだけどね、強いて言えば何だろ、円滑なコミュニケーションかな。] |
坂巻 | バッド・タイミング。てっきり独りだと思ったもんだからさ。 | |
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空知 | 嘘ついてたわけじゃないんですよ。彼女はたまたま…… | |
坂巻 | いいって、いいって。 | |
空知 | 突然、アポなしで来たんです。 | |
坂巻 | そうだよな。わかる。突然会いたくなったりすんだよ。いや俺もね、どうしても来たくなっちゃってさ。 |
澤口 | 何、これ。 | ||
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女 | ポケットベルよ。保存されてるのよ、あなたからのしつこいメッセージが。 | ||
澤口 | (取って見て)………。 | ||
女 | オハヨウ。ゲンキダシテ。ソバニイル。 | ||
澤口 | (読んで)イツモミテル。キミハヒトリジャナイ。オヤスミ。………。 | ||
空知、煙草を消して携帯灰皿ともに元の位置に戻す……。 やがて澤口、顔をあげると−。 | |||
澤口 | 何? 俺のこと好きなわけ? | ||
女 | ……何言ってるの? |