真坂かが腰を下ろしているのその下、何かが埋まっているらしく、掘り出してみると、それはラジカセである。 ビートルズの歌はそこから聞こえている。 |
語る人1 | ルールだって? 俺は他人が決めたルールに従ったことなんか、一度もないぜ。ルールなんて何の意味もないと、俺は思ってきたんだ。そうとも、俺の良心がそれに従おうと思わない限りね。------- | |
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真坂 | あなたは誰ですか? | |
語る人1 | (ノートブックを閉じて)サミー・ディヴィス・ジュニア。 |
作業員1 | よくさ、遙か昔の縄文とか弥生とか、要するに土器とかが発見されましたってニュースで流して大騒ぎするだろ。あれ、どう思う? | |
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作業員2 | どう思うってなにがよ? | |
作業員1 | なんか、おまえの人生に関係ある? | |
作業員2 | 関係ないよ。 | |
作業員1 | じゃあなんで騒ぐんだ? | |
作業員3 | だってお前、たった一個の土器、(サイズを示して)こんなもんだぞ、こんなもんが見つかるだけで、遙か昔が、実は遙か遙か遙か大昔から始まってたってことがわかっちゃうんだよ。 | |
作業員1 | だからそれ、お前の人生になんか関係ある? | |
作業員3 | 関係は、ないけどな。 |
真坂、無造作に放り出された鞄に視線……。ゆっくりと鞄を手に取ってみて傍らに置き、再びノートブックで砂を集め、小山を築き始める。 |