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#4
 ピアッシング「美咲」 

「美咲捜し」
完璧になれたらいいのに。
正解が分かればいいのに。
答えはどれだっけ。このままじゃダメ、こんな自分じゃダメ。
変わらなくては。変わりたい。ちゃんと感じたい。他の誰でもなく、あたしだという事を。
何も無い。自分には何も無い。どうしてそんなふうに思うのか、思っている時には分からない。
ただ、安心できる答えを探す。あたしは、強い自分を守って、生きていきたいと思う。でも突然、何も分かんなくなっちゃう感覚を知っている。
美咲のように、リストカットしたことは私には無い。ただ、美咲の考えるたくさんの想いを、あたしは理解でき無くない。
美咲のことを書こうとしたけど、やっぱり、あたしには書けない。
あの子は、自分を捜してる。必死なんだ。あたしは、もっと楽に生きている。ひねくれてるけど、美咲よりは素直に笑えるし、素直に怒れるし、悲しい顔を出来る。  
それでも私がこの先ずっと、足を踏み外さないとは限らない。だから自分とちゃんと向き合っていく。
島田恵美子

 



美咲 痛いッ……。

香奈恵 あ、ごめん。
美咲

今ビビッて体に電気走った。

香奈恵 うそ、大丈夫?
美咲 平気平気、続けて。
香奈恵 けっこう血、出てるよ。
美咲 こんなの蚊に刺されたのと変わんない。(脱脂綿で血を拭き取りつつ)いいから続けて。



  突然、厚底靴のガングロ少女が2人、挑むように現れ、向かい合って立つ。
少女A あたしさ、あんたのこと友達だと思ってるけど、あんたはどう?
少女B あたしもさ、あんたのこと友達だと思ってると思うよ。
少女A どれくらい?
少女B あんたが思ってるのと同じか、それ以上。
少女A 絶対的にってこと?
少女B そう、それ。絶対的に。



香奈恵 美咲ってけっこう神経図太いよね。

美咲 図太くなんかないよ。ただ血を見ると、なんか落ち着くんだよね。
香奈恵 落ち着くかなぁ。
美咲 普通はびっくりするのかな?



少女B 人は見かけによらないね。
少女A 得てしてそんなもんだよ、人間なんて。あんたの番だよ。
少女B あたし?
少女A 秘密、教えられる?
少女B 実はあたし、色白なんだ。
少女A ………。



香奈恵 ホンモノはもっと全然痛い。

美咲 香奈恵も痛かった?
香奈恵 割に平気な人もいるみたいだけど、あたしは臍ピアスのとき超痛かった。
美咲 カラダにピアス入れてるってどんな感じ?
香奈恵 なんだろう、あたしはココにいるって感じかなぁ。
美咲 (誰に言うともなく)私はココにいる……。



美咲 ………。
あんた、小学校の頃、父親がいないってバカにされて泣いて帰ってきたじゃない。覚えてないの?
美咲 ………。
(TVが面白くて突然笑う)ダハハッハハ……。
香奈恵 ………。


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