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  女A、不意に立ち上がり、片足を机に乗せ、ストッキングを脱ぎ始める。 
男1、ぎょっとなって、 女Aに視線が釘付け・・・・・。
女A 、大胆な格好のまま、鞄から新しいストッキングを出して履き替える。
掃き終えて女A、ふっと男1と目が合う。ややあって─。
女A いたんですか、飛田さん。
男1 いたよ。傷つくなぁ、その言い方。うちの女房と同じ。あら、いた?




男1 いいにくいんだけど、言っちゃおうかなぁ。

女A (目を隠すようにして)なんですか。
男1 前田さん、吉岡に惚れてたって噂あったけど。
女A・B・C ・・・・・・・・。
男1 横恋慕。



男1 吉岡も思わずびびるって言ってたよ。ホントにコンタクトなのぉ?

女A すいません、あたし行ってきますから・・・・・。
男1 行くの医務室の方がいいんじゃないの?
  女A・B・C、コートハンガーのマスクを被って石のように固まる。
男1、腕時計を見て煙草に火をつけ、時計を見続けながら吸う。
背広姿の男2、現れて煙草に火をつける。



女A 感想は?
女C (鏡で自分を見て)いいんじゃない、いいんじゃない。
女A いいわよ、いいのよ。腫れが引いたら、まるで見違えちゃったと思わない?
女C (女をA見て)見違えたよぉ、別人だよぉ。変わるもんだねぇ。
女B (鏡で自分を見て)でもまだ目が離れすぎ。
女A そお?



男2 目つきは全然変わらないね。
女A・B・C ・・・・・・・。
男2 せっかく手術したんならさ、前田さん、それなりに振る舞わなきゃ人生損するよ。
  やがて男2、何事もなかったかのように封筒を拾い上げ、そのまま悠然と女の鞄に突っ込んで去っていく。



 

男2、ニヤニヤと笑みを浮かべ、鞄から何か引っ張り出して女Cに差し出す。
それはいびつにメイクが施されたマスク・・・・。
いつのまにか男1、さらに数人の男たちが次々と現れて、次々に鞄からいびつにメイクアップされたマスクを取り出しては女たちに差し出す。
女A・B・C、次第にテーブルの上に追いつめられ、身を寄せ合う。




女C あたしは今どこにいるの?

 

女A 会社でしょ、会社の喫煙ブース。(女Bに)そうでしょ?
女B 会社よ。当たり前じゃない、何言ってるの?
女C 今、独り?
女B

独りよ。(女Aに)独りでしょう?

女A だと思うんだけど・・・・・。
女B けど何?
女A

なんかずっと笑い声、聞こえるんだよね。



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