老女 | あら優しいの、あなたの新一郎。 | |
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少女 | 今日もねフォークダンスの練習あって、ちゃんと手、握ってくれたもん。 | |
老女 | フォークダンスは普通握るわよ。 | |
少女 | フツー握らないよ。 | |
老女 | どんなフォークダンスよ? | |
少女 | オカマホレボクサー。 |
少女 | じゃハルさん、今、何? | |
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老女 | 何って? | |
少女 | アレがなくなって女じゃなくなって今、男? | |
老女 | 男じゃないでしょう。 | |
少女 | じゃ何? | |
老女 | あたしはあたし。 | |
少女 | 何よ、それ? | |
老女 | 女になったらなったでね、そのあと奥さんになったりお母さんになったりおばあちゃんになったり、次から次にいろいろなって、最後にあたしはあたしになっちゃうの。 |
少女 | 何しに来たかって、そんなこともわかんないの。聞いてんの。 | |
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老女 | なんで喧嘩腰になるの。 | |
男2 | これ。(ランドセルからハンカチで包んだものを出して手渡す) | |
少女 | (受け取って)何。 | |
男2 | 今日の給食のパン。先生がもってけって。 | |
少女 | ………。(ゆっくりハンカチを広げて見る) | |
男2 | 昨日のもおとといのも俺持ってんだよ。今度また持ってくる。もうパサパサになってっけど。 | |
少女 | ………。(不意に床にたたきつける) |